続いて、デスクトップ版SOLIDWORKSの最新バージョンであるSOLIDWORKS 2024に関する主要なアップデート内容について紹介があった。
開発のコンセプトは従来と同じく、「Work Smarter(作業の効率化)」「Work Faster(作業の迅速化)」「Work Together(共同作業)」を掲げ、設計者の生産性向上に寄与する機能強化が図られているという。「SOLIDWORKSでは常にお客さま(設計者)の声を第一に考え、何を必要としているのかを追求しながら、現場に寄り添った開発を長年継続している」(ソリッドワークス・ジャパン プロダクトマーケティングの滝澤直子氏)。今回の記者説明会では、5つの機能強化ポイントにフォーカスして説明が行われた。
まず、1つ目は「非常に多くのお客さまから要望をいただいていた」(滝澤氏)とする“下位バージョン形式でのファイル保存”への対応だ。部品、アセンブリ、図面について、最新バージョン(SOLIDWORKS 2024)から2世代前までの古いバージョン(SOLIDWORKS 2023、SOLIDWORKS 2022)のファイル形式で保存できるようになったという。「これまで、最新のSOLIDWORKSを使っているユーザーが、古いバージョンのSOLIDWORKSを使っている関係者とファイルをやりとりする場合、一度中間ファイル形式に変換する必要があった。また、インポート/エクスポートの手間はもちろんのこと、SOLIDWORKSでせっかく作り込んだフィーチャーやプロパティなどの情報が欠落してしまうこともあった。こうした背景から最新バージョンにすることや、常に最新バージョンが使える3DEXPERIENCE SOLIDWORKSの導入に踏み切れないという声も聞こえていた。今回のアップデートによって、以前のバージョンとの互換性が保たれるようになり、より共同作業しやすい環境を提供できる」(滝澤氏)。
2つ目は図面の強化だ。これまで、寸法線を直列にそろえる「直列寸法」コマンドを使用した際に、寸法線とテキストが重なって見えづらくなるケースがあったり、SOLIDWORKS側で一部の寸法線だけをオフセットしてしまい一直線にそろわなかったりすることがあった。今回のSOLIDWORKS 2024では、スペースの限られた箇所で寸法線は一直線に配置したまま、テキストだけを自動的にオフセット表示するようになった。
また、上書きされた寸法を指定した色で表示する機能が追加された。寸法の上書き自体は以前から可能だったが、SOLIDWORKS 2024では図面側で3Dモデルとは異なる寸法を上書きした際、上書きされた寸法を指定した別の色で表示できるようになった。「非常にシンプルな機能だが、図面にある無数の寸法線の中から上書きされたものがどれかが瞬時に分かることは作業効率の面で非常に大きなメリットだ」(滝澤氏)。さらに、マウスの右クリックで3Dモデルの寸法に戻す(「元の値に回復」する)ことも可能だという。
3つ目はモデリングに関する機能強化だ。SOLIDWORKS 2024ではモデリングの際に、スケッチエンティティを選択すると寸法のプレビューが表示され、そのままスケッチ寸法の作成/編集が行えるようになった。これにより寸法コマンドを使うことなく、寸法の作成が可能となり、スケッチ作業の時間が短縮できる。「こちらも一見シンプルな機能強化だが、数秒の手間の削減であっても、それが日々反復して行われる作業だった場合、膨大な作業時間の短縮につながる」と滝澤氏は説明する。
4つ目は「SOLIDWORKS Simulation」のパフォーマンス向上だ。SOLIDWORKS 2024ではメッシュ作成のアルゴリズムを見直し、複数の同一部品を含むようなアセンブリにおいて、その同一部品のメッシュを利用することで、メッシュ作成の速度を向上させている。また、ソルバーのパフォーマンス強化、メモリ割り当て管理などの改善により、SOLIDWORKS Simulation全体のパフォーマンスも向上しているという。「対象となるモデルにもよるが、ソルバーのパフォーマンス向上に関しては解析時間が72%短縮したケースもあった」(滝澤氏)。
そして、5つ目が描画パフォーマンスの向上だ。SOLIDWORKS 2024ではシステムオプションのパフォーマンスに「ハードウェアアクセラレータによるシルエットエッジ」というオプションが新たに追加されている。これはGPUでシルエットエッジ(輪郭線)を処理することでビューの回転/ズーム/移動を高速化するもので、隠線なし、隠線表示、ワイヤーフレームの3種類において描画パフォーマンスの向上が図られている。
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