前述の「北欧の持続可能な医療」の作成に関わったNCSHは、廃水処理に関連して、2022年6月より、スウェーデン研究所(関連情報)の資金を受けて、エストニアのScanBalt BioRegion(関連情報)、リトアニア・バイオテクノロジー協会(関連情報)、スウェーデン・ヨーテボリのビジネス地区(関連情報)と連携して「ギャップを埋める:バルト海地域における医薬品残留物削減のための技法とソリューション」(関連情報)というプロジェクトを展開している。
このプロジェクトは、バルト海における医薬品残留物の量を削減するために、医薬品バリューチェーンを通して、実用的なソリューション(プラクティス、手法、技法、技術)を特定することを目的としている。具体的には、3カ国(スウェーデン、エストニア、リトアニア)で、3回のワークショップを開催するとともに、デスクリサーチ、関連するステークホルダーに対するインタビューを実施している。
NCSHが作成した本プロジェクトの報告書は、以下のような構成になっている。
図2は、このプロジェクトのロードマップを整理したものである。
[クリックで拡大] 出所:ScanBalt BioRegion「Findings of the project “Closing Gaps: Techniques and Solutions for reducing pharmaceutical residuals in the Baltic Sea Region”」(2023年9月7日)を基にヘルスケアクラウド研究会作成
ここでは、プロジェクトで収集した情報のデータベース化や知識共有プラットフォームの構築を起点として、予防を念頭に置いた上流プロセスの企画/設計作業を行い、病院におけるスモールスタート型の技術ソリューションの導入/運用をへた上で、サプライチェーンの最下流に位置する廃水処理プラントの開発/実装に着手するというフローを提示している。
そして図3は、この報告書の結論の概要を示したものである。
医薬品サプライチェーンの上/中流に位置する医薬品企業や医療機関を合わせても、医薬品残留物に占めるインパクトは20%に満たない。残りの80%以上は最下流の患者に由来するインパクトであるが、企業や医療機関と比較すると規制による影響力には限界がある。従って、ソリューション展開における情報/教育の役割が大きくなり、患者や地域住民レベルで、環境や持続可能性に対する認識を高めていくようなコミュニケーション戦略が求められるとしている。
本報告書では、このようなギャップ解消への取り組みは、バルト海地域全体に渡るコラボレーションを促進し、既存のプラクティスや技術ソリューションの効果的な実装と共有が、関係国間のギャップを特定し、セクター横断的な協力関係を育成することによって加速されることを示唆するものだとしている。
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