特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

つながる機能とともに進化する「たまごっち」、最新モデルでAWSを採用した理由組み込み開発 インタビュー(1/3 ページ)

2023年7月に発売された「たまごっち」の最新モデル「Tamagotchi Uni」は、Wi-Fi機能を搭載しており、AWSのクラウドにサーバレスで直接つながることなどが話題になっている。バンダイの担当者に、たまごっちの通信機能の進化やTamagotchi UniがAWSを採用した理由などについて聞いた。

» 2023年10月04日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 さまざまな玩具を手掛けるバンダイが2023年7月に発売したのが「Tamagotchi Uni(たまごっちユニ)」である。1996年11月の初代モデルから累計9100万個以上を販売する携帯型育成玩具「たまごっち」の最新モデルとなる。

「Tamagotchi Uni」の外観 「Tamagotchi Uni」の外観[クリックで拡大]

 Tamagotchi UniはWi-Fi機能を搭載しており、AWS(Amazon Web Services)のクラウドにサーバレスで直接つながることなども話題となっている。まさに最新のIoT(モノのインターネット)玩具というわけだが、歴代のたまごっちにおいて、つながる機能や通信機能はIoTという言葉が知られる前から搭載されてきたものだ。時代の要請に合わせて進化を積み重ねてきた結果として生み出されたのが、今回のTamagotchi Uniというわけだ。

 そこで今回は、バンダイでTamagotchi Uniの企画と開発を担当したトイディビジョン グローバルトイ企画部 企画1チームの岡本有莉氏と同部 テクニカルデザインチームの坂本大祐氏に、歴代のたまごっちが通信機能を中心にどのような進化を遂げてきたのか、最新のたまごっちユニの特徴とそれを実現するためにどのような開発を行ったのかなどについて聞いた。

バンダイで「Tamagotchi Uni」の企画と開発を担当した坂本大祐氏(左)と岡本有莉氏(右) バンダイで「Tamagotchi Uni」の企画と開発を担当した坂本大祐氏(左)と岡本有莉氏(右)。「Tamagotchi Uni」は、岡本氏のように腕時計ベルトで装着することができるが、坂本氏が手で持っているように腕時計ベルトを外して従来と同様にストラップを付けて持ち歩くこともできる[クリックで拡大]

初のつながる機能は接点通信から

MONOist 最新のTamagotchi Uniは、Wi-Fiでクラウドとつながる、ということもあり、最先端のIoT機器になったように感じます。たまごっちで“つながる機能”というのはいつごろから搭載するようになったんでしょうか。

岡本氏 1997年12月発売の「たまごっち オスっち・メスっち」で、接点通信を搭載したのが最初になる。これは、互いのたまごっちを交配させられるようにすることが目的だった。

初代モデルから2021年11月発売の「たまごっちスマート」までのたまごっち年表 初代モデルから2021年11月発売の「たまごっちスマート」までのたまごっち年表。バンダイ本社2階に展示されている[クリックで拡大]

 爆発的なブームが落ち着いてからしばらく経過した2004年3月発売の「かえってきた! たまごっちプラス」では赤外線通信機能を搭載した。かえってきた! たまごっちプラスでは、玩具としてのコンセプトを大きく変更するとともに、キャラクターやブランディングも変えた。赤外線通信機能は、まさにガラケー全盛期に合わせた機能で、携帯電話機と通信することでアイテムをダウンロードすることなどができた。

 2008年11月発売の「たまごっちプラス カラー」で初めて採用したカラー液晶によって表現力が大きく高めることができた。ちょうど、2007年12月からたまごっちのテレビアニメの放送が始まっていて※)キャラクターの世界観が広がっており、カラー画面を使って、学校に行ったり、お出掛けしたりなどキャラクターのやれることが増えたことは、大きな転換点になっている。

 2009年11月発売の「Tamagotchi ID」からキャラクターがアクセサリーを付けられるようになった。キャラクター数も30以上まで増えている。発売と同じタイミングで新たなシリーズのテレビアニメも始まっており※)、商品としてより子供向けを意識するようになった。

※)当時放送されたたまごっちのテレビアニメ:2007年12月〜2008年2月「さぁイコー! たまごっち」、2009年10月〜2012年9月「たまごっち!第一期」

左から、「Tamagotchi ID」「祝ケータイかいツー たまごっちプラス」「かえってきた! たまごっちプラス」、初代「たまごっち」 左から、「Tamagotchi ID」「祝ケータイかいツー たまごっちプラス」「かえってきた! たまごっちプラス」、初代「たまごっち」[クリックで拡大]

NFCから赤外線への揺り戻しも

MONOist たまごっちに搭載していた通信機能は赤外線通信だけだったのでしょうか。

岡本氏 2014年9月発売の「TAMAGOTCHI 4U」では、赤外線通信に替えてNFC(近距離無線通信)機能を搭載している。これはデバイス同士をタッチさせて通信することを狙ったものだ。ただ、NFCの通信速度があまり速くないこともあり、タッチしたらピッと通信が終わるというようなユーザー体験にはならなかった。2016年7月発売の「Tamagotchi m!x」では、キャラクターの遺伝子を受け継いでいくというコンセプトになり、NFCによるタッチ通信と合わないこともあって赤外線通信に戻した。

 2018年11月発売の「たまごっちみーつ」は、Tamagotchi m!xと同じく遺伝をコンセプトとしつつ、赤外線通信が可能な実際に顔を合わせられる友達だけにとどまらず、日本中、世界中のたまごっちのキャラクター同士を結婚させられるようにするために、Bluetooth通信機能を搭載してスマートフォンアプリと連携できるようにした。

 人との接触が抑えられたコロナ禍真っただ中の2021年11月発売の「たまごっちスマート」は、自分のたまごっちを可愛がることをコンセプトにした。シリーズで初めて腕時計型の機種となり、初搭載のタッチパネルを使ってなでたり、同じく初搭載のマイクで話しかけたりして、たまごっちを愛でながらずっと一緒にいられるようにした。たまごっちみーつと同様にスマートフォンアプリ連携も可能になっている。

左から、「たまごっちスマート」「Tamagotchi m!x」「Tamagotchi P's」「Tamagotchi iD L」 左から、「たまごっちスマート」「Tamagotchi m!x」「Tamagotchi P's」「Tamagotchi iD L」[クリックで拡大]
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