さてこのあたりまでChorus Systemesは単独でビジネスを行っていたのだが、1997年に同社はSunに買収され、同社のEmbedded Systems Software business groupを構成することになる。また、この時点でChorus/MiXはChorusOSに名前を変更している。買収時点でSunは同社の「Solaris」は汎用向け、ChorusOSは通信業界向けと位置付けていた。
ところが3年後の2000年、Sunは大規模なリストラを余儀なくされ、Embedded Systems Software business groupへの新規投資を中止した。この時点でChorusOSはのバージョンはVersion 5.0まで上がっており、Sunによってオープンソースの形で公開された(インターネットアーカイブに記録されたWebサイト)。過去形なのは、その後SunがOracleに買収されるなどして、もはやダウンロード不能になっているためである。
Zimmerman氏は買収後もそのままSunに残ったが、Gien氏は2002年にJalunaという新しい会社を興し、ここでLinuxベースのソリューション提供およびChorusOS(ChorusOS 5.0)のサポートを行った。先もちょっと書いたが、通信業界向けにChorusOSが採用されている以上、長期的なサポートはどうしても必須である。Jalunaの創業に当たってはSunからも資金が出ていたようで、要するにChorusOSのサポートをJalunaにブン投げた格好だ。
JalunaはまずChorusOS 5を「Jaluna-1」という名称でリリースし、次いでこれをベースに「Jaluna-2/RT」という新バージョンを開発している。またJalunaはその後VirtualLogixという会社名に変更され、Jaluna-1/2とは別に「VLX Hypervisor」と呼ばれるハイパーバイザーを32/64ビットCPUやDSP向けに提供するビジネスをメインに据えたが、同社は2010年にRed Bend Softwareという同業他社に買収されている。ただそのRed Bend Softwareも2015年にHarman International Industriesに買収され、そのHarman International Industriesも2017年にSamsungに買収されている。さすがにここまで買収が繰り返されると、もはやVirtualLogixというかJalunaのリソースはインターネット上にまるで残っていない。
一応、Jaluna-1がまだSource Forgeから入手できる他(図3)、Sunを買収したOracleのWebサイトにChorusOS 5.0のドキュメントが残っているが、どこまで役に立つのかはよく分からない。企業買収が重なると、その波に飲まれていつの間にか消えていた製品は少なくないが、ChorusOSもそうしたものの一つであった。
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