日立プラントサービスは2023年10月から、製造現場の設備向けクラウド型遠隔監視サービスを提供する。
日立プラントサービスは2023年9月28日、東京都内およびオンラインで記者会見を開き、同年10月から提供するクラウド型遠隔監視サービスの概要について説明した。
製造現場の設備管理では、高度化した設備に対応できる技術者が不足しており、保守メーカーへの依存が大きくなっている。一方で、保守メーカーでは熟練保守員の高齢化が進み、人手不足からノウハウの継承が難しくなっている。また、一定の期間経過後に行う現状のTBM(Time Based Maintenance)はメンテナンスがまだ不要な設備も対象になり、余分なコストが発生していた。
今回のクラウド型遠隔監視サービスでは、遠隔監視と変化点検知という2つの機能を提供する。データは、複数の拠点にあるPLC(Programmable Logic Controller)やセンサー、SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)から収集し、IoT(モノのインターネット)ゲートウェイを通じて日立製作所と日立プラントサービスが共同開発したクラウド基盤に吸い上げる。
遠隔監視機能では、最新の測定値を表示する設備監視や、現在の警報情報などを表示する警報一覧、指定期間の測定値の時間推移が見れるトレンドグラフなどを提供し、設備のリアルタイム遠隔監視が可能になる。警報メール送信やデータのCSV出力などの機能も備わっている。
変化点検知機能ではAIを活用して設備の電気的健全性、機械的健全性を検知する。設備から集めた電流値、電圧、温度などのパターンをAIに学習させてモデルを作り、AIが導き出した予測値と実測値との差分が一定より大きくなった際にアラートを出すことで、故障予知につなげる。構築したモデルは、データの蓄積により自動的に再学習され、精度が向上する。
クラウドでのデータ一元管理により、EMS(エネルギーマネジメントシステム)やCMMS(設備保全管理システム)などとの連携も可能になる。通信経路の暗号化によるデータ漏えい防止や、データの暗号化、ファイアウォール機能や多要素認証による不正アクセス防止などセキュリティ対策も実施する。
従来はユーザー側で異常を検知してから保守員へ連絡し、保守員が現地に赴いてデータを収集、要因分析を行っていた。遠隔サービスによって、変化点を検知することで実際に異常が発生する前に対応できる他、保守員に直接知らせが届くため異常を早期に認識し、現地を訪問しなくても遠隔監視の画面から設備の状態を把握。要因分析までの時間を短縮する。これら保守対応工数の削減と障害発生の抑制により、作業効率はおよそ2倍に向上するという。
クリーンルームなどの空調エンジニアリングや水処理設備の施工を主体とする日立プラントサービスでは、自然冷媒を用いた冷凍機の製造、販売、保守を強みとする日本熱源システムと2020年から協業しており、今回のサービスは両者の共創活動の中から実現した。
クラウド型遠隔監視サービスはまず日本熱源システムが保守を行うCO2冷媒冷凍機に実装予定となっている。日立プラントサービスでは、他の保守メーカーへの提供も図る他、設備管理支援や汎用の遠隔監視、省エネルギー支援などのサービスも追加していく。今後5年間で数十サイトへの導入を目指す。
将来的にはロボットやドローンなどを活用した、保全業務の遠隔化、自動化および施設運用全体の最適化支援サービスを構築する。
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