エアコンの構成要素のうち、重要な役割を担っている圧縮機と熱交換機について説明する。
家庭用エアコンに使用されている圧縮機は回転式が一般的であるが、ここでは圧縮機の原理を分かりやすく説明するために往復式の圧縮機を例に説明する。
図3に往復式圧縮機の理論圧縮線図を示す(参考文献[2])。
1→2の工程で、吸い込み圧力Plowのガスを吐出圧力Phighまで圧縮して、2→3の工程で、ガスを吐出弁を通して高圧側に吐出し、ピストンは上死点に到達する。3→4の工程で、上死点付近に残った高圧ガスが吸い込み圧力Plowまで膨張する。4→1の工程では、新しいガスが吸い込み弁を通して吸い込まれる。実際には、内部漏れ、吐出吸い込み時の圧力損失があるが、ここでは無視している。
ピストン上部には吐出弁、吸い込み弁があり、それぞれ所定の圧力下で弁が開く。吐出弁は高圧側配管に、吸い込み弁は低圧側配管につながっている。図3中央に示した1→2→3→4→1で囲まれた面積が圧縮機の行う仕事W[J]になる。圧縮機の周期をT[s]とすると、W/T[W]が動力となる。
熱交換機は室内機と室外機に設置される。暖房時には高温の凝縮器とこれより低温の室内の空気との間で熱交換が行われ、低温の蒸発器とこれより高温の外気との間で熱交換が行われる。一方、冷房時には低温の蒸発器とこれより高温の室内の空気の間で熱交換が行われ、高温の凝縮器とこれより低温の外気の間で熱交換が行われる。いずれの場合も、凝縮器または蒸発器内の二相状態の冷媒とファンによる強制対流下にある空気との熱交換となる。この様子を原理的に示すと図4となる。
なお、ここでのq[W]は熱量で以下の式で表現できる。
K[W/m2・K]は熱通過率、λ[W/m・K]は熱伝導率、L[m]は熱伝導体の厚さ、h[W/m2・K]は熱伝達率、添え字のhは高温側流体と熱伝導体との伝熱に関するもの、lは熱伝導体と低温側流体との伝熱に関するもので、A[m2]は伝熱面積である。熱伝導部分は材料と形状が決まれば一位で定義できるが、熱伝達部分はファンの流量、熱交換を促進させるためのフィンの形状など、さまざまな要因が関係するため、実験式および経験式に頼ることになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.