ソリッドステートリレーを使った1/fゆらぎ扇風機注目デバイスで組み込み開発をアップグレード(14)(1/2 ページ)

注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。第14回は、ソリッドステートリレーとArduino、一般的な扇風機を組み合わせて1/fゆらぎ扇風機を作る。

» 2023年06月29日 07時00分 公開
[今岡通博MONOist]

はじめに

 筆者には「“1/fゆらぎ”なるものは気持ちいいんだって」という程度の知見しかなかったところからこの記事は始まります。連載第13回記事のネタ元になった半導体のアバランシェ現象から生成される乱数は1/fノイズらしく、その原因や生成過程は未知に覆われています。なんだかロマンを感じますよね。

 そんなつもりになってネットを眺めていると、1/fゆらぎは大自然の営みに関わっているとか、スケールは全地球規模とか全宇宙規模にも収まらないとか、勢いよくネットに情報を提供されている方も見かけます。何はともあれ、1/fゆらぎは人を引き付ける魅力を持っているのでしょうね。

 本稿は、1/fゆらぎをより現実的なアイテムに落とし込んで、誰でも手軽に1/fゆらぎを体感してもらおうという意図で企画しています。具体的には、一般的な家庭用の扇風機をArduinoとソリッドステートリレーで制御して1/fゆらぎの風を作る簡単なシステムを考えてみました。誰でも自作できるレベルで設計したつもりですが、AC100Vを扱いますので、電気工作に自信のない方はできるだけ経験者と一緒に作業を進めてください。一つ間違うと、感電、やけど、ショートによる発煙、発火などの事故につながります。記事を読んで興味は持ったけれども、実際の製作は見合わせるというのも立派な勇気ある決断だと思います。

ソリッドステートリレー

 本記事におけるソリッドステートリレーの部分は、秋月電子通商が販売している「ソリッドステート リレーSSR 半導体リレー キット」をベースにしています。図1は同キットに付属している取扱説明書の回路図です。

図1 秋月電子通商の「ソリッドステート リレーSSR 半導体リレー キット」の回路図 図1 秋月電子通商の「ソリッドステート リレーSSR 半導体リレー キット」の回路図[クリックで拡大] 出所:秋月電子通商

 主な部品はゼロクロスフォトトライアック「TLP561J」とスナバレス電力用トライアック「BTA24-600CW」です。TLP561JはLEDと受光素子で制御側とドライブ側を絶縁しています。IN(DC)からの入力とACの制御側とを電気的に絶縁しています。これにより、IN(DC)をマイコンやその他の弱電系回路から商用電源を利用したい場合でもAC100Vを安心して制御できるようになるのです。

 また、TLP561Jはゼロクロス制御が可能で、AC電源が0Vになるところでスイッチングしてくれます。これによりAC100V系から発生するノイズも低減してくれます。筆者が子供のころ作った調光器はトライアックとダイアックの組み合わせだったかと思いますが、その近くでラジオなどを聞こうとするとすさまじいノイズが出ていたことを思い出します。これは、AC電源の波形の途中でスイッチングが行われて、正弦波ではないさまざまな高調波が発生するためラジオなどにも障害を与えていたのでしょう。

 さて、BTA24-600CWはTLP561Jからのゼロクロス制御でAC電源を実際にドライブします。こういったパワー系のデバイスの最大定格はデバイスから発生する熱を理想的に逃がした場合の値です。放熱板の性能が不十分だったり放熱板を付けなかったりする場合は、かなり控えめな値になることを想定して設計することが肝心です。微小な電力しか扱わない時に大きな放熱板は必要ないのですが、見積もった値が3倍になってもそれに耐え得る設計にするのがエンジニアリングの基本ですね。

“1/fゆらぎ”の制御回路

 図2は、Arduinoとソリッドステートリレー、そしてAC電源入力とAC電源出力の配線図です。

図2 “1/fゆらぎ”の制御回路の配線図 図2 “1/fゆらぎ”の制御回路の配線図,図2 “1/fゆらぎ”の制御回路の配線図,図2 “1/fゆらぎ”の制御回路の配線図

 図3は筆者が実際に組み立てたセットです。ソリッドステートリレーの基板は主要部品を再利用できるようにソケットを利用しています。また、ACケーブル接続用ターミナルを用いています。コンセント部などは何度も使ってきた手元のものを流用しているので年季が半端ないことはご容赦ください。

図3 “1/fゆらぎ”の制御回路を実際に組み立てた状態 図3 “1/fゆらぎ”の制御回路を実際に組み立てた状態[クリックで拡大]
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