Artec Europe(Artec 3D)は、大型の対象物や建物などの3Dスキャン/デジタルツインの作成に最適な長距離用ワイヤレス3D LiDARスキャナー「Artec Ray II」を発表した。日本での販売は2023年7月末を予定し、価格は900万円程度になる見込みだ。
Artec Europe(ブランド名はArtec 3D)は2023年6月21日、大型の対象物や建物内部などの3Dスキャン/デジタルツインの作成に最適な長距離用ワイヤレス3D LiDARスキャナー「Artec Ray II」を発表した。
Artec Ray IIは、2018年にリリースした「Artec Ray」の後継機に当たり、Hexagon傘下のLeica Geosystemsとの共同開発により実現した。旧機種よりもスキャン速度が約10倍向上した他、スキャン範囲も20m拡大し、最長で130m離れた場所から対象物のスキャンが行える。
日本での販売開始は2023年7月末からを予定しており、価格に関しては「900万円程度になる見込みだ」(同社)という。
Artec Ray IIは、1秒当たり最大200万点の高速スキャンが可能で、最高解像度でのフルドームスキャンを約1.7分(約102秒)で完了できる。3D位置精度は1.9mm@10m/2.9mm@20m/5.3mm@40m、解像度は3mm/6mm/12mm@10mから選択できる。
本体は2つのバッテリーで動作し、電源を切ることなくスタンバイ状態の2つの予備バッテリーに切り替えられる。これにより、合計8時間スキャンを続行できるという(バッテリーは4つ付属)。本体サイズは120×240×230mmで、重さは5.35kg(バッテリーなし)。IP54の防塵(じん)防水機能を有し、屋内外での利用が可能だ。
さらに、Artec Ray IIは使い勝手にもこだわっており、自動点群位置合わせや移動オブジェクトの自動削除といった機能を搭載する他、タッチスクリーンでの操作やモバイルデバイスとの連携など、ユーザーのスキャン体験を向上させる機能やインタフェースが備わっている。
風力タービン、船舶のプロペラ、航空機、橋梁といった大規模な対象物や、工場などの大規模な空間での利用を想定する他、事故や事件に代表される法科学の現場や考古学の現場での利用も見込む。
Artec Ray IIでスキャンした大型オブジェクトや空間のデータと、他のArtec 3Dスキャナー製品でスキャンした特定部位の詳細データを、同社独自開発の専用ソフトウェア「Artec Studio」を介してシームレスに統合でき、包括的かつ詳細な3Dモデルの製作が可能になるという。中でも「世界初」(同社)をうたうAI(人工知能)駆動型ワイヤレスハンドヘルド3Dスキャナー「Artec Leo」との組み合わせはデジタルツインの作成に最適だとする。
同日(2023年6月21日)行われたオンライン説明会で、Artec Europe 最高経営責任者(CEO)のArtyom Yukhin(アルチョム・ユーヒン)氏は「Artec Ray IIは、Leica Geosystemsの強みであるハードウェア品質と、Artec 3Dが培ってきたアルゴリズムの融合によって実現した非常にユニークな製品だ。さらに、AI駆動型のArtec Leoと同等レベルの“スマート3Dスキャナー”でもあり、ポータブル、ワイヤレスの特長を生かしながら、ユーザーに対して新しいワークフローを提供できる」と述べ、Artec Ray IIの可能性をアピールした。
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