脳の構造を模倣するニューロモーフィック技術を活用したAI半導体を手掛けるオーストラリアのBrainChipが、第2世代IPとして2023年9月のリリースを計画している「Akida 2.0」について説明した。
脳の構造を模倣するニューロモーフィック技術を活用したAI(人工知能)半導体を手掛けるオーストラリアのBrainChip(ブレインチップ)は2023年5月30日、東京都内で会見を開き、第2世代IPとして同年9月のリリースを計画している「Akida 2.0」について説明した。マイコンと組み合わせてセンサーなどの時系列データを扱うことを想定していた第1世代の「Akida 1.0」から大幅な進化を遂げ、映像データを高効率に処理できるようになりエッジAI向けの半導体IPとして活用範囲が大幅に広がったとする。
BrainChipは脳型AI半導体として知られるニューロモーフィック技術を、半導体IPとして初めて商用化した企業として知られている。脳型AI半導体としては、IBMの「True North」やインテルの「Loihi」、国内では東北大学の研究開発成果などが知られているが、現時点では商用化されていない。BrainChip CEOのSean Hehir氏は「ニューロモーフィック技術の半導体への実装はアナログベースがほとんどであり、半導体工場のプロセスへの依存が大きくなる。当社のニューロモーフィック技術の半導体IPはフルデジタルであり、TSMCやインテルなどのファウンドリーで製造できる点が大きなメリットになる」と説明する。
第1世代IPとなるAkida 1.0は2020年から展開しており、これをベースにBrainChipは着実に事業を拡大してきた。現在ライセンスを提供しているのはルネサス エレクトロニクスとメガチップスの2社だが、自動車業界ではMercedes-BenzやValeo、宇宙開発ではNASA(米国航空宇宙局)などによる評価が進んでいる段階だ。
Hehir氏は「AI活用の観点でもクラウドへの集中が進んでいるが、エネルギー効率やセキュリティ、レイテンシなどを考慮すると、今後1兆個以上の市場に拡大するエッジデバイスへの分散処理が求められるようになる。そういったAIoT(AI+IoT)市場の規模は2030年には1兆2000億米ドルまで拡大すると予測されている。当社のニューロモーフィック技術を活用すれば処理性能の不足や高い消費電力といった現状のエッジAIの課題を解決できる」と強調する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.