三菱電機のパワーデバイス事業は2030年度にSiC比率30%へ、鍵はモジュール技術組み込み開発ニュース(2/2 ページ)

» 2023年05月31日 08時30分 公開
[朴尚洙MONOist]
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ディスクリートではなくモジュールで勝負

 ただし、生産したSiCデバイスが売上高に反映されるためには顧客に採用されることが必要になる。そこで三菱電機が、今後の市場急拡大を想定しているのが、ディスクリート(個別半導体)としてのSiCデバイスではなくパッケージング済みのSiCモジュールである。EVへの搭載を中核にSiCモジュール市場は急拡大し、2021〜2027年度の年平均成長率は43%に達するという調査もある。「パワーデバイスの市場動向としては、ディスクリートが先行して、その後からパワーモジュールの需要が立ち上がってくる。EV向けSiCデバイスの需要も足元はディスクリートが中心だが、SiCモジュールへの引き合いは前倒しで来ている状況だ」(竹見氏)という。

SiCモジュールの市場成長見込みと三菱電機のパワーモジュールの強み SiCモジュールの市場成長見込みと三菱電機のパワーモジュールの強み[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 三菱電機のSiモジュールのシェアは、民生用IPM(インテリジェントパワーモジュール)で1位、電鉄用フルSiCモジュールで1位、パワーモジュール全体で2位となっており、ディスクリートよりもパワーモジュールで優位性を築いてきた。自動車向けパワーモジュールの累計採用実績は車両2600万台相当になっており、最新のSiモジュール「J1シリーズ」が同容量帯の競合他社製品と比べて約29%の小型化、約53%の軽量化を実現するなど、技術面でもリードしている。

三菱電機のSiCモジュールの強み 三菱電機のSiCモジュールの強み[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 SiCモジュールの開発でも、2010年10月にルームエアコン向け、2012年12月にCNCドライブユニット向け、2015年6月に高速鉄道の主変換装置向けで世界初を実現。2019年2月には自動車の電動システム向けで世界最高出力を達成するなどさまざまな実績を積み上げている。

 これらに加えて、半導体・デバイス事業の売上高の13%を占める高周波・光デバイス事業で培ってきた化合物半導体技術に基づくSiCウエハーの基板欠陥無害化技術や、独自の電界緩和構造の採用で素子抵抗率を従来比で50%低減したトレンチ型SiC-MOSFETなどSiCデバイス単体となるチップ技術を組み合わせて、今後急拡大が見込まれるSiCモジュール市場のニーズに応えていく構えだ。

 さらに、インフラや産業機器、車載システム、エレベーター、空調機器、白物家電などを手掛ける三菱電機グループ内に向けてSiCモジュールをはじめとするパワーデバイスを供給し、それらの知見を生かした付加価値の高い製品開発を進めていく方針である。

三菱電機グループ内の各BAとの事業シナジーを生かす 三菱電機グループ内の各BAとの事業シナジーを生かす[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 なお、2023年度からの三菱電機の新たな経営体制では、関連する複数の事業本部をまとめたBA(ビジネスエリア)に分け、BA内やBA間の連携を推進する方針となっている。グループ内にユーザーを持つという強みを発揮するには、これらBAとの緊密な連携が不可欠だ。また、新たな経営体制で半導体・デバイス事業は社長直轄事業となった。竹見氏は「今後の事業強化に必要な設備投資などについても即断即決しやすい体制になった」と述べている。

2023年度からの三菱電機の新たな経営体制 2023年度からの三菱電機の新たな経営体制。半導体・デバイス事業は社長直轄事業となった[クリックで拡大] 出所:三菱電機

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