次の想定ユースケースはトイレだ。トイレ機器メーカーが、便器とエッジデバイスをセットにして、次世代型IoTトイレを構想したとする。中規模なオフィスビルに全面的に導入されれば、1棟当たり数百台のエッジデバイスを管理することになる。これが広く普及すれば、管理対象のエッジデバイスは天文学的な数になる。
ITが本業ではないメーカーがIoTを導入して新規サービスを立ち上げるような場合、担当として確保できる開発者の数はかなり限られてしまうと考えるべきだろう。そうすると、もはやエッジデバイスを現地でメンテナンスするという発想ではサービスそのものが成り立たない。エッジマネジメントサービスの導入を前提にすれば、ビル単位でエッジデバイスの稼働状況をリモートで管理できるため、担当者が少人数でも運用が可能になる。
また、サービスが軌道に乗ってビジネスの規模が拡大すれば、エッジマネジメントサービスを導入していたとしても少人数の開発者が運用を兼務するのは難しくなってくる。その場合、運用管理を情報システムの運用部隊に引き継ぐこともあり得るだろう。
ただし、老舗メーカーのIT運用チームにIoTの知見があるとは限らない。運用管理をスムーズに引き継ぐには、誰にでも分かりやすいUIを備えた管理ポータルのような機能が必要になる。そうした観点からも、エッジマネジメントサービスは威力を発揮するはずで、開発者がサービス開発に集中できる環境整備に大きく貢献できる。
エッジマネジメントサービスの導入によって、IoTの運用負荷をさまざまな角度で低減できることが理解していただけたのではないだろうか。総じて、IoTサービスの採算性やIoT導入の投資対効果を向上させる効果が期待できるのは明らかだと言えよう。
次回の最終回では、ユーザー企業がエッジマネジメントサービスや、IoTの導入支援ベンダーを選定する際に留意すべき点を解説する。IoTをビジネスの成長につなげるヒントとして活用していただきたい。
大野泰弘(おおの やすひろ) 株式会社NTTPCコミュニケーションズ サービスクリエーション本部
さまざまな企業のコンサルティングを実施するシステムエンジニアとして活動。現在は成長領域であるAI/IoTに注力しており、AI/IoTの現場導入を促進するサービスの企画、開発を担当。
細野泰剛(ほそのやすたか) 株式会社NTTPCコミュニケーションズ サービスクリエーション本部 主査
トータルVPNソリューション「Master'sONE」のサービス企画、プロダクトオーナーとして活動。現在はAI/IoT部門のサービス企画、開発を担当。
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