技術報告会でこれまでの活動成果を発表したGAMサロン会員の東亜工業では、ホットスタンプ成形に用いるコンフォーマル冷却金型の開発に取り組む。同社 代表取締役社長 飯塚慎一氏も「CETIMとの共同開発ではこれまでとは“逆転の発想”を得ることでき本当に驚いた。従来はプレスメーカーとして、切る、削るの引き算が中心だったが、そこにAMの足し算が加わった。この技術を早く手の内化して、いろんな分野に使っていきたい」と期待する。
CETIM MATCOR ゼネラルマネジャーのポリーヌ・ル・ボルニュ氏は「金属AMは単一の技術ではなく、複数の技術の組み合わせとなる。装置そのものや研究開発、人材育成など大きな投資やリソースが必要だ。GAMのような共同体は技術的、財務的リスクを和らげることができ、最新技術を導入するうえで重要な役割を果たす」とGAMの意義を語る。
同じく活動報告をしたしげる工業は自動車や産業機械向けの樹脂成形などを手掛けている。同社 取締役常務執行役員 開発本部本部長の熊谷泰典氏は「われわれの製品自体にAMを用いるのは難しいが、成型金型をAMで革新していきたい」と話す。
樹脂成型では高精度な製品を作る上で、いかに全体を均一に冷やし、反りを発生させないかが重要となる。AMを活用すれば、これまでにない構造の冷却配管を持つ金型を製作できる。AMの装置で製作した金型によるテストでは、10ショット後の入れ子の温度を実測すると従来品は50〜55℃まで上昇していたのに対して、AMの入れ子は28〜31℃にとどまり、設定温度の25℃をほぼ維持できていた。冷却に要する時間もほぼ半分になっていたという。「今後の量産を踏まえてもかなり可能性の高い技術になる。樹脂や条件を変えながら、引き続き効果を検証していきたい」(熊谷氏)。
共和産業では、普段は砂型で鋳造している二輪用のシリンダーヘッドをAMの装置で試作。部分的に見れば100分の1mm単位で3Dモデルの形状を再現し、かなり緻密な造形ができたという。一方で造形時の変形やゆがみを防ぐサポートをどう設置し、除去するかなどの課題も確認した。
同社では脳外科内視鏡手術用鉗子なども開発しているが、医療機器の製造も職人の技能に依存しているケースが少なくなく、技術が途絶えると作れなくなってしまう可能性もある。「そういった技術をデジタル化して継承しながら、AMの装置で新しいモノづくりを進めていきたい。また、AMは本来できなかった形状を作るだけでなく、材料の金属粉末をミックスすることでより良い素材も作ることができるので、新素材の開発にも挑みたい」(鈴木氏)。
日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長の須藤元氏は「日本のモノづくりにAMがどのように貢献していくかはまだ探索の道が続いているが、群馬産業技術センターとCETIMの参加がわれわれの活動を力強く推進し、新たな視界が広がっていくと確信している」と述べた。
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