遮音と通気を両立する音響メタマテリアル遮音材、社会実装に向けてパートナー募集デザインの力

ピクシーダストテクノロジーズ(PxDT)は社会課題の1つである騒音問題の軽減に貢献すべく、音響メタマテリアル技術を活用した遮音材を開発した。

» 2023年05月10日 09時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 ピクシーダストテクノロジーズ(以下、PxDT)は2023年4月24日、社会課題の1つである騒音問題の軽減に貢献すべく、音響メタマテリアル技術を活用した遮音材(以下、音響メタマテリアル遮音材)を開発したことを発表した。

ピクシーダストテクノロジーズは音響メタマテリアル技術を活用した遮音材を開発した ピクシーダストテクノロジーズは音響メタマテリアル技術を活用した遮音材を開発した[クリックで拡大] 出所:ピクシーダストテクノロジーズ

 PxDTが開発した音響メタマテリアル遮音材は、入射した音波(騒音)と逆位相の音波(散乱波)を生成して騒音を打ち消すメタマテリアル構造を備え、従来技術では困難だった“遮音性能と通気性の両立”を実現する。例えば、音を遮断したくても換気や排熱のために音漏れの原因となる開口部を設ける必要があったり、クルマの騒音を遮りたくても風圧の問題で防音壁を設置できなかったりなど、遮音と通気の両立が求められるさまざまなケースに対応できるという。

ピクシーダストテクノロジーズが開発した音響メタマテリアル遮音材の仕組みについて ピクシーダストテクノロジーズが開発した音響メタマテリアル遮音材の仕組みについて[クリックで拡大] 出所:ピクシーダストテクノロジーズ

 音響メタマテリアル遮音材は、開口部があっても高い遮音性能を発揮する。PxDTによると、開口率50%の条件下で30dBの低減が確認できており、換気時などに生じる音問題の軽減が期待できる。さらに、音問題が解消されることで自然換気の活用が進み、消費電力の削減など副次的な効果も得られるという。

 また、音響メタマテリアル遮音材の遮音性能は、構造や形状により発揮されるため、目的や求める性能に応じて構成する材料を自由に選択可能。部品点数を増やすことなく既存の筐体に遮音性能を付加したり、間伐材や再生材を活用した音響メタマテリアル遮音材を実現したりできる。

素材選択の自由度が高いため、間伐材や再生材などを活用した音響メタマテリアル遮音材を実現することもできる 素材選択の自由度が高いため、間伐材や再生材などを活用した音響メタマテリアル遮音材を実現することもできる[クリックで拡大] 出所:ピクシーダストテクノロジーズ

 これらの特徴に加え、音響メタマテリアル遮音材は、適用シーンに応じた柔軟な遮音特性を実現する。例えば、特定の周波数帯のみ遮音性能が向上する性質や、低周波から高周波まで幅広い範囲で高い遮音性能を示す性質など、用途に応じたチューニングが可能だ。これにより、不快な音や騒音だけを取り除いたり、音量を小さくしたりすることが可能となる。

音響メタマテリアル遮音材は適用シーンに応じて遮音特性をチューニングすることも可能 音響メタマテリアル遮音材は適用シーンに応じて遮音特性をチューニングすることも可能[クリックで拡大] 出所:ピクシーダストテクノロジーズ

 音響メタマテリアル遮音材は、空調、建材、什器(じゅうき)、鉄道、自動車といったさまざまな分野での活用が見込まれる。また、素材選択および加工自由度が高いことから、サステナビリティに配慮した製品開発での適用も期待できるという。

 現在、PxDTは音響メタマテリアル遮音材の社会実装に向けてパートナー企業を募集するとともに、基本構造の追加や標準製品の拡充、カスタマイズ品の開発などを継続し、幅広い分野の騒音課題/ニーズに対応することで、社会全体の音問題の解消を推進するとしている。

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