機能安全の基礎「機械安全規格」とは何かこれだけは知っておきたい機能安全(1)(3/4 ページ)

» 2023年04月18日 07時00分 公開

機能安全規格もIEC 61508を頂点とした3層構造

 機能安全の基本規格であるIEC 61508は、2000年に第1版が制定され、現在は2010年に改訂された第2版が使用されています。また、第3版に向けた検討が行われており2023年に第3版のリリースが予定されています。

 IEC 61508は規格の範囲は非常に広いのが特徴です。IEC 61508では、安全関連制御システムのコンセプトからシステムの実現、運用や保守から廃棄に至るまでを16段階のフェーズに分けて安全ライフサイクルを定義し、おのおののフェーズで要求事項を規定しています。

 IEC 61508は、先に触れたように、ISO/IECガイド51の3段階の階層において、機械安全のB規格に分類されており、同様に機械安全のB規格であるISO 13849-1やIEC 62061と密接な関連があります。その一方で、IEC 61508を頂点に、機能安全の関連規格も3段階の階層から構成されています。1層目に当たるIEC 61508以下、2層目の「グループ安全規格」、3層目の「製品の安全規格」から構成されており、ISO/IECガイド51で規定されています。

機能安全規格も3層構造となっている 機能安全規格も3層構造となっている[クリックで拡大] 出所:セーフティイノベーション

 例えば、グループ安全規格の階層には、制御システムの機能安全を規定するIEC 62061、プロセス産業計測制御分野のIEC 61511、自動車産業分野のISO 26262などがあります。これらの他、鉄道、医療、ロボットなどの産業分野がこのグループに含まれます。

機能安全における基本規格と関連規格の関係性[クリックで拡大] 出所:セーフティイノベーション

 機械安全の規格の構造と機能安全の規格の構造は、同じ3層構造の三角形でありながら、スタート地点である頂点の位置が異なります。機械安全の構造は、機械安全の基本概念を包括する原則であるISO 12100を頂点とします。

 これに対して機能安全規格の構造は、機械安全の概念でグループ安全の階層であるB規格に属するIEC 61508を基本の安全規格とし、これを頂点にグループ安全規格、製品安全規格の階層で構成されます。つまり、機械安全と機能安全の階層構造は相似形ということになります。

 機械安全と機能安全では、階層を構成する規格が重複していると感じることもあります。これは、E(電気)/E(電子)/EP(プログラマブル電子等制御システム)の安全性を高める目的で機能安全規格の体系をまとめる際に、関連規格を機械安全の体系から抜粋したのが理由と考えられます。

 機能安全規格の体系はIEC 61508を頂点としますが、その適用範囲は非常に広くなっています。また、製品の基本設計から廃棄に至るまでのライフサイクルにおける安全評価の他、審査や評価を行う機関や評価者の独立性や資質についても言及していることが特徴です。

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