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» 2023年04月18日 07時00分 公開

機能安全の基礎「機械安全規格」とは何かこれだけは知っておきたい機能安全(1)(2/4 ページ)

B規格で特に重要なISO 13849-1とIEC 62061

 機械安全規格の理解では、グループ安全規格であるB規格の理解が重要なポイントになります。

 B規格には、A規格(ISO 12100)から派生する重要な2つの規格があります。制御システムの安全関連部:設計部に適用するISO 13849-1と、E(電気)/E(電子)/EP(プログラマブル電子等制御システム)の機能安全に適用するIEC 62061です。これら2つの規格は、後に説明する機能安全の関連規格における分類で頂点となる「IEC 61508」と密接な関連があります。

 ISO 13849-1とIEC 62061は、他のB規格やC規格の多くから参照される規格です。このため、機械や設備のメーカーにとって特に重要な規格となっています。また、機械指令などにおいて法令の適合性評価の根拠となる規格(機械指令整合規格)にもなっています。

ISO 13849-1

 1999年に制定された規格です。その後、機能安全の基本規格であるIEC 61508の内容を取り入れ、機械に必要な安全レベルを数値化する「パフォーマンスレベル(PL)」を導入して2006年に改訂されました。

 PLは、PL“a”〜PL“e”の5段階に分類され、PL“e”が最も高いパフォーマンスレベルになります。ISO 13849-1は、2015年に最新版が発行されています。

IEC 62061

 2021年に最新版が発行された規格です。機能安全規格IEC 61508の傘下規格群(※)の1つで、機械類に特化して適用するためにIEC 61508の基本部分を受け継ぎつつ内容をスリム化しています。IEC 61508では、極めて大きな災害が発生する恐れがある原子力プラントなども対象に含まれます。これに対し、IEC 62061ではプラント関連が除外されています。

 IEC 62061では、安全レベルの表現に安全度水準(SIL:Safety Integrity Level)が使われています。SIL1〜SIL3のレベルが規定されており、IEC 61508で扱うSIL4は含まれません。

※)【IEC 61508」の傘下規格群】IEC61800-5-2:可変速電気駆動装置、IEC61511:プロセス産業、IEC62304:医療機器ソフトウェアなど、多くの傘下規格がある

 ISO 13849-1とIEC 62061は、安全度のレベルを定量化する表現が異なっているだけで、内容は同じと理解して間違いありません。

どのように規格準拠すべきか――ローターリーエンコーダーの場合

 例えば、製品としてロータリーエンコーダーを開発する場合、準拠すべき規格には次のようなものがあります。

 まず、A規格としてISO 12100への対応があります。先に説明したように、A規格に分類される規格はISO 12100だけです。ISO 12100は全ての機械が準拠すべき基本概念であり、ISO 12100に準拠することが他の機械安全規格に準拠する前提となります。

 次のB規格では、産業別に規格が規定されています。ロータリーエンコーダーは、産業機械のグループに属する製品です。このため、まず産業機械における機能安全の基本規格であるIEC 61508が適用されます。また、制御システムとして使われるので、ISO 13849-1にも準拠する必要があります。

 この他、可変速電気駆動装置のセンサーとして用いられるのでIEC 61800-5-2も適用されます。さらに、産業機械分野の機能安全になるのでIEC 62061への準拠も求められることになります。

 特にISO 13849-1とIEC 62061は、機械指令などの法令の適合性評価において根拠となる規格(機械指令整合規格)になっており、製品を欧州に輸出する際に必要となります。

 このように、1つの製品を開発するには、A規格であるISO 12100に加えて複数のB規格、C規格への準拠と適用が必要となります。以下の表では、ロータリーエンコーダーに加えて、産業機械のコントローラーの事例も挙げておきました。

グループ 個別機械 準拠すべき規格(B規格、C規格)
産業機械 ロータリーエンコーダー IEC 61508
ISO 13849-1
IEC 62061
IEC 61800-5-2
※参考:IEC 61800-5-3;2021(新設)
産業機械 コントローラー IEC 61508
ISO 13849-1
IEC 62061
ただし、プレス機や射出成型機などモーターも制御するコントローラーの場合はIEC 61800-5-2(可変速電気駆動装置)の規格も対象となる
製品が準拠すべき規格の例 出所:セーフティイノベーション

改訂の歴史を知れば、規格の意図が理解しやすくなる

 産業機械に限らず、多くの機械は進化を続けています。昨今の機械では、各種センサーやGPS、制御用コンピュータといった電子機器の搭載が当たり前になっています。それに対応するため、安全規格も改訂を続けています。

 例えば、ダンプトラックやブルドーザー、掘削機などを含む土工機械では、2018〜2021年に改版された最新規格で機能安全の内容を取り込んでいます。特に直近の改訂規格であるISO 19014-1〜ISO19014-5では、制御システム関連で機能安全の取り組みが一層求められています。

土工機械における規格改訂の流れ 土工機械における規格改訂の流れ[クリックで拡大] 出所:セーフティイノベーション
土工機械の各規格の概要 土工機械の各規格の概要[クリックで拡大] 出所:セーフティイノベーション

 機能安全に関する理解は、このような規格改訂の方向性と概要を知ると、より理解しやすくなります。

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