他方、AIイノベーション推進政策の観点からみると、2017年3月22日、カナダ連邦政府のイノベーション・科学経済開発省は、同年度連邦政府予算の中で、世界のAIにおけるリーダーとしてのカナダの地位を強固にすることを目的とする「汎カナダ人工知能戦略」(関連情報)を発表した。その中で、カナダ先端研究機構(CIFAR)が調整役となり、ケベック州モントリオール、オンタリオ州トロント/ウォータールー、アルバータ州エドモントンの産学クラスターをベースに、5年間/総額1億2500万カナダドル(約124億円)の研究・人材育成プログラムを展開する計画を打ち出している。この戦略の主要目標は以下の通りである。
その後2020年6月22日、イノベーション・科学経済開発省は、汎カナダ人工知能戦略の第2フェーズ(関連情報)を発表した。
第2フェーズは表1に示す通り、3つの柱から構成される。
なお、AI研究の中核拠点を担うエドモントンのアルバータ機械知能研究所(Amii)(関連情報)、モントリオールのケベック人工知能研究所(Mila)(関連情報)、トロントのベクター研究所(関連情報)は、健康医療/ライフサイエンス分野においても、各地域の大学や臨床医療機関、スタートアップ企業などと連携して、AI研究や人材育成活動を積極的に進めており、海外からの注目度も高い。
前述の自動意思決定システムに関連して、カナダ連邦政府は2019年4月1日、「自動意思決定指令」(関連情報)を施行し、翌2020年4月1日から適用を開始した。
本指令は、カナダ市民および連邦政府機関に対するリスクを低減するとともに、カナダの法律に従って、より効率的で、正確で、一貫性があり、理解しやすい意思決定を行うよう先導するような方法で、自動意思決定システムの導入を保証することを目的としている。そして、本指令の順守により、以下のような結果をもたらすことを期待するとしている。
各政府機関の副次官補が、自動意思決定システムを利用したプログラムについて、以下のような要求事項を順守するとしている。
これらのうちアルゴリズム影響度評価については、カナダ連邦政府のオープンガバメントポータル(関連情報)上で、図1に示すようなオンラインツール(関連情報)を公開している。
さらに2019年9月9日、カナダ連邦政府は、AIを利用する政府機関向けの調達指針原則として、「人工知能(AI)の責任ある利用」(関連情報)を公表した。
この指針では、政府機関に対して、AIの効果的で倫理的な利用を保証するために、以下のような原則を定めている。
また、責任あるAI利用に向けた取り組みとして、前述の自動意思決定指令やアルゴリズム影響度評価に加えて、図2に示す通り、カナダ政府向けのAIソリューション販売に関心のあるAIサプライヤーリストを公開している。
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