2.4GHzのWi-Fiディテクターとなるゲルマニウムダイオード1N60に替えて、ショットキーバリアダイオードHN2S01FUを接続してみました。HN2S01FUはリード線がないのでアンテナは別途接続します。 結果は1N60から代替したWi-FiディテクターをWi-Fiの発生源と思われるあらゆる機器に近づけてもセラミックイヤフォンからは何も聴こえませんでした。1N60を用いたWi-Fiディテクターのイヤフォンが鳴っている所でもです。
結局、2.4GHz帯で1N60をHN2S01FUで代替することは残念ながら無理という結論になりました。そこで思い当たる原因ですが、ダイオードの端子間容量が最大で40pFあります。1N60などのゲルマニウムダイオードの端子間容量が一桁pFに対してかなり大きな値です。この値が大きいとデバイスは周波数が高くなるにつれデバイス本来の機能を果たせなくなります。なお、この端子間容量はアノードとカソードの接点で、コンデンサーと同様の静電容量のことです。端子間容量が大きいと高い周波数ではダイオードの機能を阻害します。そのためHN2S01FUは、2.4GHz帯ではダイオードとしての検波機能を果たせなくなっているのです。
そこでもっと端子間容量の小さなダイオードを探すことにしました。たどり着いたのはどこにでもある汎用小信号高速スイッチングダイオード「1N4148」です。確かに端子間容量は一桁pFなのですが残念ながらゲルマニウムダイオードに比べ順方向電圧1.0Vと高くゲルマニウムダイオードのように無電源で使えそうにありません。こちらが立てばあちらが立たずといったジレンマのど真ん中にハマってしまった感じですね。
仕方ないので2.4GHz帯の受信用途では無電源は諦めることにしました。順方向に1N4148の順方向電圧1.0Vより高い電圧をかけてやるとWi-FiのSSIDの音も確認できました。しかしこの用途のためだけに乾電池あるいは水銀電池を積むというのは筆者の流儀にはかないません。それとクリスタルイヤフォンも徐々に入手性が悪くなってきています。であればダイナミックイヤフォンが使えるようにアンプを搭載するという手もありますが、そうなると電池1本では済まなくなります。本来の無電源で超シンプルなWi-Fiディテクターとはさらに懸け離れてしまいます。
ではどうすれば電池を搭載せずに済むのか。目を付けたのがスマートフォンのマイクやヘッドセットを接続する4Pプラグです。このプラグにはエレクトリックコンデンサーマイクを接続するための電圧が供給されているのでこれを1N4148に供給する順方向電源として利用します。実は、これだけではスマートフォンは1N4148をマイクとして認識してくれないのです。そこで1N4148と直列に1k〜5kΩの抵抗を入れます。抵抗値は接続するスマートフォンごとに調整が必要かもしれません。そして1N4148のリード線はアンテナとして利用します。これらの回路をプラグ内に収めてしまいます(図3)。これで2.4GHzのアンテナと検波装置がスマートフォンのマイクの代わりに接続されたことになります。
最後の課題は、このマイクの代わりに接続されたWi-Fiディテクターの音をどのようにスマートフォンで聴くかとということですが、Androidの場合に限りますがうってつけのアプリが見つかりました。アプリ名は「マイクスピーカ」です。これを使えばマイク端子に入力された信号をスマートフォンのスピーカーから出力することができます。
厳密には1N60を1N4148が代替したとはいえませんが、スマートフォンとの組み合わせで本来のゲルマニウムダイオードを用いたWi-Fiディテクターとほぼ同様の使い勝手になると思います。今回はたまたま手元にあったので1N4148を用いましたが、これ以外にも汎用の小信号高速スイッチングダイオードであれば端子間容量の小さいものが見つかると思います。読者の皆さんもこの用途に使えるダイオードを探してみてはいかがでしょうか。
今回はゲルマニウムダイオードの代替策を中波帯と2.4GHz帯に分けて検討してみました。その決め手は順方向電圧と端子間容量でしたね。両者を満たすダイオードを筆者は見つけられませんでしたが、もし読者の皆さんの中にご存じの方がいらっしゃいましたらぜひMONOist編集部までご一報いただければ幸いです。
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