あらためて、今回PX-S7000の製品開発で実践した“デザインチームからのデザイン提案の段階でCAEを早期に活用するアプローチ”について、3人はプロダクトデザイン、設計、解析の立場でそれぞれ次のように手応えを語る。
プロダクトデザインの立場から中村氏は「今回はこれまでにない新規要素がたくさんあったにもかかわらず、CAEのおかげで初めての構造を取り入れつつ、デザイン側が思い描いていたものにほぼ近い形で量産デザインまで進められた。通常、デザインや見た目だけでなく、安全性や操作性などいくつもの要素が絡んで、最終的な製品として落とし込まれていく。そうした過程の中で、デザインよりも他の要素を優先するといったケースも当然あるが、PX-S7000に関してはほぼ妥協なく理想のデザインを追求できた」と述べる。
一方、設計の立場として永妻氏は「デザイン提案に対して、できる/できないの選別をCAEで素早く判断できた点が一番のメリットだと感じている。また、設計者の勘というものがあるが、それが正しいのか/正しくないのかの裏付けをとれる点も役に立った。実際に、自分自身の判断が正しかったことが証明され、自信をもってチャレンジできた部分もあった。他にも、これまでだと『できません』と言ってきた部分に対して、CAEの力を借り、どうすれば実現できるのかという方向性や落としどころについて提案がもらえた点は非常にありがたかった」と話す。
最後に解析を担当した佐藤氏は「今回のようにデザインチームから上がってきたデザイン提案に対して、設計よりも前にCAEで解析/検証し、選別した結果を踏まえてデザインと設計を突き詰めていくといった流れで新製品開発をやり遂げたのは初めてのことだ。従来のアプローチと異なるため、定量的に効果を示すことが難しいが、新規性の高いデザインを追求する今回のようなケースで非常に有効な手法だと実感した。また、今回は新しい要素がたくさんあり、構造的にもチャレンジの多い取り組みだったが、設計に対して『ここはもう少し攻めた設計ができそう』あるいは『この構造ではダメじゃないか』といった判断の確証を得る部分で、CAEの力を存分に発揮できたと思う」と語る。
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