OKIは2023年3月27日、物流分野におけるルート配送計画をAI(人工知能)や量子コンピューティング関連技術を活用して最適化する、配送計画最適化サービス「LocoMoses(ロコモーゼ)」を発売したと発表した。
OKIは2023年3月27日、物流分野におけるルート配送計画をAI(人工知能)や量子コンピューティング関連技術を活用して最適化する、配送計画最適化サービス「LocoMoses(ロコモーゼ)」を発売したと発表した。
OKIでは全員参加型のイノベーション活動を推進しており、国際標準規格であるISO 56002を基に独自のイノベーションマネジメントシステム(IMS)である「Yume Pro」を推進している。2020年4月にはイノベーション推進センターを設立し、同年12月にはIMSをグループ全体へ展開。全員参加型のイノベーションを推進している。その取り組みの中で商用化へと進んだのが今回のロコモーゼだ。
「2020年5月にビジネスマッチングサイトでこのイノベーションの考え方を掲載し、そこで手を挙げてくれたのが、物流事業を行うロンコ・ジャパンさんだった。そこで共創を続けてきてようやく今回商用化サービスまで実現できた」とOKI 執行役員 イノベーション責任者兼技術責任者の藤原雄彦氏は語る。
ロコモーゼは、OKIが開発した「コスト最小型ルート配送最適化AI」を用いて最適な積載量やルートを短時間で自動的に立案できるSaaS(Software as a Service)型のサービスである。これまで熟練社員に属人化していた配送計画作業の負担解消に加え、「分割配送」の手法を取り入れた高効率なルート配送が実現できる。
物流センターから店舗などの物流を行う支線物流での活用を想定しており、配送計画者が配送先位置や配送車両の積載量、運行可能便数、納品時間などの配送要件を送ると、ロコモーゼが最適な配送計画を立案し、返答するという仕組みだ。主な特徴は3つある。
1つ目は、迅速に配送計画を最小化する計画の作成が行えることだ。従来の物流の配送計画については、熟練技術者がカンコツで作成する属人的なもので、さらに熟練者であっても作成には1時間や2時間がかかるケースが多かった。しかし、ロコモーゼを使うことで15分程度までに削減できるという。さらに、走行距離による燃料費や高速道路利用料などの配送コストが最も小さくなる配送計画を正確に算出できる。
2つ目が、「分割配送」に対応することだ。通常の配送では、1回の配送で必要な荷物をまとめて配送先に届ける場合がほとんどで、配送車両の積載率が低い場合は、配送車両の運行コストが無駄になっているケースが生まれている。しかし、目的配送先に近い配送先に向かう配送車両の積載率に空きがある場合に、そこに分割して積載することで、運行車両の積載率を高めることができる他、トータルの運行車両の総移動距離や稼働便数を低減することなどが可能となる。ロコモーゼでは、運行車両の情報と荷物の情報を最適に組み合わせ、分割配送も活用した最小コストの計画も迅速に作ることができる。
3つ目が、熟練者が考慮する観点を取り入れられる点だ。雪などの天候状況や渋滞状況などに応じて、配送リスクが高いルートを事前に除外したり、高速道路利用において一部区間だけを一般道とするなど柔軟性の高い設定を行うことができる。「配送時間帯の指定やドライバーの業務時間均等化などのよくある機能に加えて、熟練配送計画担当者が特に気にするポイントを設定可能とした」(OKI 執行役員 社会インフラソリューション事業部長 井上肇氏)。
先述したようにロコモーゼは、OKIが2020年からロンコ・ジャパンとの共創により、ロンコ・ジャパンの配送現場で実験を繰り返し行い製品化したものだ。ロコモーゼを活用することで、ロンコ・ジャパンの業務でもさまざまな効果が得られたとしている。「最長1時間30分かかっていた配車業務を10分程度でできるようになった他、積載率も従来の平均85%から95%へと向上させられた。車両の走行距離も従来の人手による配車から8%削減できている」とロンコ・ジャパン 代表取締役社長の福西靖之氏は語っている。
今後OKIでは、共創パートナーであるロンコ・ジャパンと共同で、ロンコ・ジャパンが販売する配車システム「ラーク」にロコモーゼを組み込んで2023年5月から提供を開始する。「ロコモーゼは配送の計画を行うところを担い、配送業務全体の管理などについてはラークが担う形となる」(井上氏)としている。さらに、ロンコ・ジャパン以外に配車システムなどを担うベンダーへの販売なども計画しており、2027年度までに売上高2億円を目指すとしている。
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