丸紅は、イギリスのVertical Aerospace(バーティカルエアロスペース)がRolls-Royce(ロールスロイス)や米国の電子機器メーカーHoneywell(ハネウェル)、ベルギーの化学メーカーSolvay(ソルベイ)とともに開発した電動垂直離着陸機「VX4」を運航する。
VX4は、パイロット席を含め5席を備えた空飛ぶクルマで、最高時速は325kmに達し、航続距離は161kmに及ぶ。Vertical Aerospaceは、2021年12月にSPAC(特別買収目的会社)上場を達成し、1400機を超えるVX4のプレオーダーを受注している。
丸紅 専務執行役員 社会産業・金融グループCEOの河村肇氏は、「当社は、2023年1月に25機のVX4の購入予約権を取得しただけでなく、Vertical AerospaceとMOU(基本合意書)を締結し、国内でVX4の運航に向けた市場調査を共同で実施している」とコメントした。
SkyDriveは同社が開発を進める電動垂直離着陸機「SD-05」を運航する。SD-05は、操縦士を含めて最大で2人搭乗できる空飛ぶクルマで、最高時速は100kmに達し、運航条件により変わるが実運用航続距離は5〜10kmとなっている。駆動方式は12基のモーターとプロペラを活用し、主要構造材料はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの複合材やアルミ合金などで、最大離陸重量は1100kgだ。
SkyDrive 代表取締役CEOの福澤知浩氏は、「当社では、大阪・関西万博の会場を中心に大阪ベイエリアで、空飛ぶクルマが飛行し、来場者に空飛ぶクルマが身近なものとして認識されると予想している。2026〜2030年には、日常的に使えるモビリティとして空飛ぶクルマの商用運航が拡大し、空飛ぶクルマの整備、部品、人材などのサービスを扱う企業が設立されるだろう。2031〜2035年には、空飛ぶクルマの自律飛行やオンデマンド運航など、便利なサービスがリリースされ、使いやすいモビリティとして普及すると予測している」と強調した。
SkyDriveは、空飛ぶクルマと物流ドローンの開発、製造、販売、運航を手掛けるメーカーで、177人の従業員が所属しており、本社は愛知県豊田市で、東京都新宿区と大阪市北区梅田に拠点を持つ。
オリックスは大阪・関西万博会場内の離着陸場運営を担当する。同社は、空飛ぶクルマに関連する既存事業として、関西エアポートを通じ、関西国際空港、大阪国際空港、神戸空港の運営を手掛けている他、傘下のORIX Aviationでは、50機の航空機を保有し、アセットマネジメントサービスで139機の航空機を管理している。
経済産業省が主催する「空の移動大革命に向けた官民協議会」に参加しているだけでなく、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、空飛ぶクルマの離着陸場オペレーション手法の確立に向けた研究開発も行っている。
国土交通省 航空局長の久保田雅晴氏は、「航空局では現在、空飛ぶクルマの実現に向け、FAAや英国民間航空局(CAA)と連携し、情報交換しながら、空飛ぶクルマの機体や運航の安全基準、操縦者の技能証明、離着陸場の設置基準について、検討を進めている。2022年12月にはこういった基準の検討状況を公表した。2023年3月までには空飛ぶクルマの制度整備における方向性を示していきたい」と話す。
続けて、「今後は、各基準をしっかり作り込み、完成した基準を順次公表していく。2024年3月末までには、全ての制度整備を完了したい。こういった取り組みを通じて、大阪・関西万博における空飛ぶクルマの運行を後押しする」と付け加えた。
なお、今回の大阪・関西万博では、空飛ぶクルマの運航事業会社として、12社の応募があり、そのうち4社を選んだ。選定にあたっては、型式証明の取得を進めているかを重要視したという。
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