2015年、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることなどを定めた「パリ協定」や、2020年に日本政府が打ち出した、2050年にGHGの排出を全体としてゼロ化するという、いわゆる「カーボンニュートラル宣言」などを背景に、経営ビジョンや経営計画において「20XX年のカーボンニュートラル達成」など、排出量の具体的数値目標を打ち出す企業が増えている。
一方でその実現を支えるはずの排出量削減活動において、年単位で具体的な削減目標を設定し、各期間での目標達成に向けた見通し管理を行っている事例は、現時点で極めて少ない。削減活動の担い手は、明確な目標を持たないままベストエフォート的に活動しているのが実態かもしれない。もし上記で言及した業務プロセスや役割分担、排出量データなどの問題を解決でき、効率のよい排出削減活動ができるようになったとしても、それが、自ら定めたカーボンニュートラル達成期限に照らして十分かどうかは分からない。やはり、長期目標を着実に達成させるためには、その目標を短期間で小分けして、日常の取り組みにおける成果の物差しとする必要がある。
多くの企業が、中期経営計画でうたった売り上げや利益の目標に基づき年次予算を策定し、それを実現するための販売計画や生産計画などを、これを担う実務部門が期中の実績と突き合わせつつ緻密な着地管理を行っている。経営層が対外的にGHG排出量削減目標を発表した以上は、こうした予算制度と同様にその長期削減目標を達成すべく、これを中期ないし年単位の目標にブレークダウンした上で、具体的削減施策について期中の進捗と削減量の目標達成状況を管理すべきだ。
ここまでの問題を下図のように整理してみよう。
現状での、データに基づくGHG削減活動の課題も自ずと明確になる。それは、「排出量削減活動全体の業務プロセスと役割分担の明確化」「Scope3関連データを収集する仕組みの構築」「長期目標に連動した年次予算管理の枠組み整備」の3つである。いずれか1つでも取り組みが進まなければ、効率的かつ継続的なGHG削減活動は実現できないはずだ。
次回第3回では、これらの課題を踏まえつつ、サステナブルプランニングを実装するための段階的な導入方法について述べる。
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