レゾナックの出発は厳しい足元で、原材料価格高騰と販売数量減で営業利益は278億円減製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

レゾナックが2022年12月期通期業績を発表。売上高は前期比270億円減の1兆3926億円で、営業利益は、外部環境の変化でケミカルおよび半導体/電子材料のセグメントで減益し、前期比278億円減の590億円となった。

» 2023年02月15日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 レゾナック・ホールディングス(レゾナックHD)は2023年2月14日、オンラインで会見を開き、2022年12月期の通期連結業績について説明した。ケミカルセグメントが大きく増収したが、プリント配線板や蓄電デバイス、アルミ缶/圧延品、食品包装用ラップ、ドイツの断熱部品メーカーISOLITEなど前年に行った事業譲渡による売り上げ減で、売上高が前年比270億円減の1兆3926億円になった。

連結業績の概要[クリックで拡大] 出所:レゾナックHD

半導体/電子材料事業の営業利益は前期比53億円減の442億円

レゾナック・ホールディングス 取締役 常務執行役員 CFOの染宮秀樹氏

 営業利益は、外部環境の変化でケミカルおよび半導体/電子材料のセグメントで減益し、前期比278億円減の590億円を記録した。事業譲渡影響を除く継続事業ベースの売上高では前期比1339億円増の1兆3828億円と持ち直したが、営業利益は同180億円減の600億円と厳しい結果となった。

 レゾナックHD 取締役 常務執行役員 CFOの染宮秀樹氏は、「2022年の営業利益594億円と前期の営業利益872億円の差異を要因別に分解すると、事業譲渡の影響が98億円の減益、数量要因で247億円の減益、原材料価格要因などで129億円の増益となった。これは、原材料価格の高騰によるコスト増と販売価格上昇を勘案したものである。さらに、黒鉛電極低価法の戻入益剥落が198億円の減益となったが、前年に計上した黒鉛電極低価法の戻入益である198億円が2022年はないため減益扱いとなった。加えて、その他で136億円の増益となったが、内訳の代表的なものは円安効果や黒鉛電極の受払差となる」と話す。

当期の営業利益594億円と前期の営業利益872億円の差異のイメージ[クリックで拡大] 出所:レゾナックHD

 セグメント別では、半導体/電子材料事業の売上高は、前期に実施したプリント配線板事業譲渡の影響を受けた他、2022年後半から半導体と電子材料の需要に減速が見られたが、同年前半の旺盛な需要により、前期比42億円増の4272億円だった。しかし、半導体/電子材料事業の営業利益は、原材料価格高騰などの影響で前期比53億円減の442億円と下落した。

半導体/電子材料事業の売上高と営業利益(億円ベース)[クリックで拡大] 出所:レゾナックHD

 同事業の主要製品別の業績をみると、半導体前工程材料の売上高は、2022年初からの良好な半導体需要を要因に、電子材料用高純度ガスとCMPスラリーが増収し、前期比190億円増の1002億円となった。半導体後工程材料の売上高は、2022年後半から半導体後工程でメーカーの生産調整が生じたが、同年前半の旺盛な需要により、前期比31億円増の1883億円と増えた。デバイスソリューションの売上高は、HDメディアのデータセンター向け需要が2022年後半から低迷したが、SiC(シリコンカーバイド)エピウエハーの出荷数量が増加し、前期比8億円増の993億円と微増した。

 モビリティ事業の売上高は、一部製品で民生用需要の低迷の影響を受けたが、2022年後半から起きている自動車生産数の回復で前期比68億円増の1806億円となった。しかしながら、営業利益は、のれん(企業買収時に生じた時価評価純資産と買収価額の差額)と無形資産の償却費により15億円の赤字だった。

モビリティ事業の売上高と営業利益(億円ベース)[クリックで拡大] 出所:レゾナックHD

 同事業の主要製品別の業績をみると、自動車部品の売上高は、自動車生産台数の回復により、樹脂成形品、摩擦材、粉末治金製品がそれぞれ増収し、前期比151億円増の1464億円とアップした。リチウムイオン電池材料の売上高は、正負極用導電助剤が増収となったが、カーボン負極材、アルミラミネートフィルム「SPALF(スパルフ)」が減収し、前期比87億円減の307億円と落ち込んだ。

 イノベーション材料事業の売上高は、原材料価格高騰に伴う値上げにより、製品価格が上昇したが、販売数量減により減収し、前期比22億円減の1411億円となった。営業利益も、原材料価格高騰のコスト増加分を価格に転嫁する作業でタイムラグが生じ、前期比38億円減の98億円と下落した。

 ケミカル事業の売上高は、前期比968億円増の5276億円となったが、原材料価格高騰の影響などを受け、営業利益は同比130億円減の249憶円と下がった。

イノベーション材料事業およびケミカル事業の売上高と営業利益(億円ベース)[クリックで拡大] 出所:レゾナックHD

 同事業の主要製品別の業績をみると、石油化学の売上高は、保有する生産施設で4年に1度の大型定期修理を実施したが、ナフサ価格高騰による石油化学製品の価格上昇で増収し、前期比470億円増の3247億円となった。しかし、定期修理に伴う数量減と受払差縮小により減益した。化学品の売上高は、製品の値上げによる販売価格上昇で増収し前期比151億円増の871億円となったが、原材料価格高騰などのコストアップにより減益だった。黒鉛電極の売上高は、主に製品の価格上昇により増収増益となり、前期比344億円増の1157億円を記録した。

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