定番タイマーIC「NE555」の無安定モードを深掘りする注目デバイスで組み込み開発をアップグレード(9)(2/2 ページ)

» 2023年01月17日 07時00分 公開
[今岡通博MONOist]
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コンデンサーの電圧が3Vを超えた状態

 では次に、外付けコンデンサーの電圧が3Vを超え6Vを下回る状態を見ていきましょう(図4)。まず状態が変わるのがコンパレータBです。ここから見ていきましょう。コンパレ−ターBのマイナス入力に3V以上の電圧がかかった場合に着目します。ここでプラス入力の電圧は3V固定ですから、プラス入力の電圧をマイナス入力の電圧が上回ったことになります。するとコンパレータBの出力は1から0となります。この値をひとまず押さえておいてください。

外付けコンデンサーの電圧が3Vを超え6Vを下回る状態 図4 外付けコンデンサーの電圧が3Vを超え6Vを下回る状態[クリックで拡大]

 さて、もう1つのコンパレータAを見てみましょう。マイナス入力には6Vが印加されています。プラス入力は3Vを少し超えたところですから、マイナス入力の6Vを超えることはできません。このためコンパレータAの出力は依然として0のままです。そしてもう1つのリセット系端子は0に固定されています。今回の状態でコンパレータBの出力は1から0に遷移しましたが、フリップフロップは以前の状態を保持しているので出力は1のままとなります。依然としてトランジスタのコレクタとエミッタ間は導通せず、コンデンサーへの充電は継続され電圧は3Vを超えて上昇を続けます。

コンデンサーの電圧が6Vを超えた状態

 図5は、コンデンサーの電圧が6Vを超えたあたりの状態を示しています。コンデンサーの電圧が6Vを超えるとコンパレータAが変化します。コンパレータAのプラス入力に6V以上の電圧が印加されますので、マイナス入力の6Vを上回ることでコンパレータAの出力は1となります。この出力はフリップフロップのリセット系入力に接続されているのでフリップフロップはリセットされ保持していた出力は1から0に遷移します。

外付けコンデンサーの電圧が6Vを超えた状態 図5 外付けコンデンサーの電圧が6Vを超えた状態[クリックで拡大]

 するとトランジスタのベースに印加される電位が論理的に1となり、コレクタからエミッタが導通します。これによりコンデンサーの電荷がトランジスタを介して流出し電圧は下がり始めます。

コンデンサーの電圧が6V以下に下がる局面

 今度は逆の順序をたどってみましょう。トランジスタが導通してコンデンサーの放電を発動したときの状態です。コンデンサーの電圧が下がり始めて、6Vを下回って3Vは上回っている状態です。この状態ではコンパレータAの出力は0に戻りますが、フリップフロップの出力には変化はありません。よって、依然としてトランジスタのベースへの入力は1のままで、コレクタからエミッタへのコンデンサーの放電は続き、電圧は下がり続けます。

再びコンデンサーの電圧が3V以下になると

 次にコンデンサーの電圧が3Vを下回った状態を見てみましょう。コンパレータAの出力は以前と変わらず0のままです。そしてコンパレータBですが、ここでプラス入力の電圧がマイナス入力の電圧を再び上回り、この瞬間コンパレータBの出力は再び1となります。するとフリップフロップの出力はリセットされ0から1に遷移します。

 これでトランジスタのベースへの入力は0になりますので、コレクタからエミッタへの電流は遮断され、コンデンサーからの放電が停止し再び充電の電流が優位になりコンデンサーの電圧が上昇し始めます。このように動作を繰り返すことで、外付けの2つの抵抗とコンデンサーによってNE555は発振インターバルを実現しているのです。すなわちNE555の出力はコンデンサーへの充電時は1、放電時には0となります。

外付け抵抗とコンデンサーの値

 外付け抵抗は2つありますが、その値の比でNE555の出力のデューティ比が決まります。またこれらの抵抗値が大きくなると出力周波数は低くなります。そしてコンデンサーの容量が大きくなると出力周波数は低くなります。外付け抵抗とコンデンサーの値、出力周波数の関係はデーターシートやその他のインターネット上の情報を参考にしてください。ここまでこの記事をお読みになった読者は、それらの参考情報がなくても外付け抵抗とコンデンサーの値と出力周波数の関係についておのずと察しがついていると思いますが……。

おわりに

 前回に引き続き定番タイマーICであるNE555について、無安定モードの動作を深掘りしてみました。このモードにより、内部抵抗ダンゴ三兄弟が卓越した役割を果たしていることがお分かりいただけたかと思います。

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