オーストラリアのデジタルメンタルヘルスを支えるゲーミフィケーション : 海外医療技術トレンド(87) (2/4 ページ)
本連載第31回 で触れたように、2000年代から保健医療関連ICT基盤の構築が先行していたオーストラリアでは、「オーストラリア国家デジタルヘルス戦略(2018-2022)」(関連情報 )などをベースに、デジタルヘルスから生み出される資産を利活用してソリューション化し、ワールドクラスのデジタルヘルス産業を育成する動きが顕在化していた。このような状況下で注目されるのが、デジタルを活用したメンタルヘルス領域のイノベーションである。
デジタルメンタルヘルスサービスに関わる信頼性や安全性、品質については、2020年11月、オーストラリア医療安全・品質委員会が「国家安全・品質デジタルメンタルヘルス(NSQDMH)標準規格」を策定・公開している(関連情報 )。NSQDMH基準は、以下の3つの基準から構成される。
臨床的・技術的ガバナンスに関する標準規格:デジタルメンタルヘルスケアの信頼性、安全性、品質を改善・維持し、サービスのユーザーの健康アウトカムを向上させるために必要な臨床的・技術的ガバナンス、安全性・品質システム、安全な環境(デジタルシステムのプライバシー、透明性、セキュリティ、安定性など)を記述する
消費者との提携に関する標準規格:サービスのユーザーがいる適切な場所で、人間中心のデジタルメンタルヘルスシステムを構築するためのシステムや戦略を記述する。支援する人々には以下のようなものがある
a.共同意思決定に含まれる
b.自身のケアにおける提携者
c.デジタルメンタルヘルスケア品質の開発と設計に関与する
ケアモデルに関する標準規格:デジタルメンタルヘルスサービスを開発・提供し、サービスユーザーや支援する人々およびその他に対する危害を最小化し、安全性のためにコミュニケーションをとり、心的状態の急激な悪化を認識して対応するためのプロセスを記述する
その後2021年7月7日には、オーストラリア保健・高齢者ケア省が、デジタルメンタルヘルスサービスの提供に対する統合的・戦略的アプローチを支援し、政府による将来の財源に関する意思決定を知らしめることを目的として、「国家デジタルメンタルヘルスフレームワーク」(関連情報 )を公表した。図3 は、同フレームワークの全体像を示したものである。
デジタルメンタルヘルスフレームワークでは、以下の6つを目標に掲げている。
目標1:製品および製品を設計し、提供する方法の中心に消費者を配置する
目標2:消費者の危害を最小化するために、保護を設定する
目標3:ステークホルダーに対して、デジタルメンタルヘルス製品およびサービスにおける信頼と自信を構築する
目標4:取り込みと行動変容を加速させるために、異なる資金調達モデルを考慮する
目標5:ステークホルダーのために、情報および情報へのアクセスを簡素化する
目標6:幅広いメンタルヘルスおよび保健システムに渡ってデジタルメンタルヘルスサービスを統合する
また、上記の目標を達成するためにとるべき行動を、以下の5つの領域で定義している。
行動領域1:各個人が適切なケアを適切な時間や場所で受けるのに役立つよう、接続されたケアの提供を強化する
行動領域2:デジタルメンタルヘルスサービスを、適切な場では混合型ケアモデルで、採用し提供するために、信頼と自信を強化する
行動領域3:全ての消費者集団に対して、デジタルメンタルヘルスサービスへの公平なアクセスを実現する
行動領域4:インパクトを評価し、継続的な改善をけん引するために、モニタリングと評価を、デジタルメンタルヘルスサービスに組み込む
行動領域5:個人中心の全身ケアの提供を支援するために、より広いシステムで、デジタルメンタルヘルスサービスの統合を強化する
そして、これらの目標や行動領域の達成を支援する、以下の5つの重要システムイネイブラーを設定している。
労働力のケイパビリティ
資金調達モデル
ソフトウェアプログラム、プラットフォーム、情報システム
ブロードバンド、デジタルインフラストラクチャ、デジタル機器
デジタルおよび健康のリテラシー
その上で、デジタルメンタルヘルス全体に渡る変化を評価するために、以下の5つのサービス最適化カテゴリーを設定している。
経験と信頼
品質と安全
相互運用性
モニタリングと評価
公平とアクセス
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