今回のCFD解析の戦略について、佐藤氏は「2つのCFDソフトウェアを併用した。最初に、おおよその気流の状況を把握するため、『Ansys Discovery』によるリアルタイムシミュレーションを実施。次に、ハイエンドCFDである『Ansys Fluent』により、詳細な気流解析と二酸化炭素濃度分布解析を行った」と説明する。
Ansys Discoveryは、GPUを使用し、メッシュレスで解析が可能であるため、即座に解析結果が得られるメリットがある。一方、ハイエンドCFDのAnsys Fluentは解析時間がかかるものの、高精度な解析結果が得られるという利点がある。「両者を併用することで、迅速かつ高精度な検証を目指した」(佐藤氏)という。
リアルタイムシミュレーションが可能な「Ansys Discovery Simulation」を用いた解析では、使用する流体を「空気」に設定し、店舗内の風の流れ(気流解析)を確認した。
講演では、フラムドールの気流解析の様子を紹介。約2分間で解析が終了し、短時間で流れ場の傾向を把握することができたという。解析結果は、ベクトルやコンターで表示され、空調の吹き出し口から下向きに出た風の流れが床面に当たって、全体に広がっている様子を確認できた。また、風が強く当たる部分は赤く、弱い部分は青く表示され、かつ表示角度を任意で変えられるため、どの席によく風が当たるのかなどをビジュアルで確認することが可能だ。「上から全体を見ると、風の当たりやすいところがよく分かる」(佐藤氏)。
さらに、個体表面の流速のみを可視化し、テーブル表面の流速分布を確認したところ、座席ごとに大きく異なることが判明。佐藤氏は「比較的流れの速いテーブルは換気効率が高い領域であり、壁際など流れの停滞しているテーブルは換気効率が比較的低いのではないかと推察した。そこで、実際にお客さまの呼気がどの程度滞留しているのかを検証するため、ハイエンドCFDで詳細検討を実施した」と説明する。
Ansys Fluentによる解析では、対象空間は20℃の空気で満たされているものとし、空調の給気口から一定流速の流入を定義し、流速は風速計による実測値を入力。人モデルの口からは呼気として1m/sの流れを発生させた。また、二酸化炭素は拡散物質として、空気中0.04%、呼気中4%含まれているものとし、拡散係数は1.46×10-5m2/sとした。
そして、これらに基づき、フラムドールおよびTOKYO隅田川ブルーイング2階を対象に、満席状態と半席間引いた状態、それぞれで定常解析を実施し、二酸化炭素濃度分布を確認した。
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