2021年7月に東京・品川にあった本社機能が移転された栃木事業所は、デクセリアルズが中期経営計画の中で推進しているスマート工場プロジェクトのマザー工場に位置付けられており、反射防止フィルムの生産プロセスはその先行事例となっている。
反射防止フィルムの生産プロセスは「接続」「脱ガス」「スパッタリング」「防汚塗布」「検査」という5つの工程に大まかに分かれている。「接続」は、反射防止層を成膜していく基材となるロール状のフィルムをつなぎ合わせていくプロセスだ。幅1330mmのフィルムに対して長さは実に4000mにもなるという。「脱ガス」では、接続したロールを真空チャンバー内で巻き直しながら、次の「スパッタリング」のプロセスで歩留まり低下の原因となるガスと水分を除去する。
デクセリアルズのドライ式の生産プロセスの中核を担うのが「スパッタリング」だ。ロールtoロール方式で用いられる巻き出しロールと巻き取りロールの間に、真空チャンバー内にターゲット材を配したスパッタリング装置が3台配置されている。各スパッタリング装置内にはターゲット材を配置できるカソードが複数あり、これらのカソードを使って、反射防止フィルムを構成する5つの層について1nmレベルでの高精度な成膜を行う。
「防汚塗布」は、指紋や汚れを付きにくくする、ふき取りやすくするフッ素系樹脂の単層膜を塗布する。これまでは塗布と乾燥によるウェット方式を採用していたが、最新製品の「HDシリーズ」では、「スパッタリング」と同様の真空蒸着法を採用して防汚層の摺動耐久性を40倍以上に向上させている。
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