激変する世界の物流市場に対して柔軟に対応するフェデックス エクスプレスへの需要は大きく伸びており、追い風が吹いている状況にある。この追い風をしっかりつかんで着実な成長を遂げていくためには、デジタル化の取り組みが必須だ。
同社は2020年8月に、輸送中の貨物の状態をリアルタイムで可視化するサービス「SenseAware」の提供を開始している。SenseAwareでは、Bluetooth通信機能とマルチセンサーを搭載するIoT(モノのインターネット)デバイスを同梱することで、貨物の位置、温度、湿度、露光、気圧、衝撃という6つの項目についてリアルタイムに状態を確認できるようになる。また、2022年1月には、マイクロソフトのクラウドERP「Microsoft Dynamics 365」と連携した、小売業者や販売業者、ブランド向けのクロスプラットフォームを展開することも発表している。
久保田氏が担当するグラウンドオペレーションとの関連では、自動配送車両や配送ロボット、物流倉庫でのロボットアーム活用などを実証実験ベースで進めている。米国では自動配送車両を開発するNuroと提携し、2021年6月から米国テキサス州ヒューストンでいわゆる“ラストマイル物流”での試験運用を進めている。また2021年7月には、2019年から実証実験を続けているRoxoの配送ロボットを日本国内向けに披露した。
物流倉庫でのロボットアームの活用では2021年1月に、中国・広州のフェデックス中国南部EC貨物仕分けセンターで、DorabotのAI(人工知能)を搭載したインテリジェント仕分けロボット「DoraSorter」を導入している。
これらの最新技術を導入していく上で、久保田氏が重要だと考えているのが、貨物の管理を行う際にフィジカルの世界とデジタルデータをしっかりとひも付けて管理していくことだ。久保田氏は「どんな貨物がどこにあって、どう動いているのかを把握しなければならない。貨物を物理的に配送するだけでなく、貨物にひも付くさまざまな情報をしっかり管理することが重要。これが崩れるとサービスを提供できなくなる。フェデックス創業者で現会長のフレデリック・スミスは、創業当時から『貨物だけではなく情報も重要』と言っており、そういった意識があったからこそフェデックスは国際物流業に参入できた」と指摘する。
約680機の航空機と約20万台の車両という、CO2を排出する輸送機器を自社で多数保有するフェデックスにとって、カーボンニュートラルへの対応も重要な事業課題だ。同社は2021年3月に、2040年までに全世界でカーボンニュートラルなオペレーションを達成するための計画を発表している。取り組みは大まかに「配送車両の電化」「持続可能なエネルギーの活用」「炭素隔離」の3つに分かれており、そのために20億米ドル(約2700億円)を超える初期投資を行う。
配送車両の電化では、新規購入する車両のEV(電気自動車)の比率を2025年に50%、2030年には100%に引き上げる。その上で2040年には、全ての車両をEVに置き換える方針だ。例えば米国では、GM(General Motors)の商用EVブランド「ブライトドロップ」の購入を進めている。
持続可能なエネルギーの活用では、バイオ燃料の導入に加えて、旧型機であるDC-10のB767への置き換えなどによる効率化も重要な要素となる。炭素隔離では、イェール大学の研究に約1億米ドルを出資するなどしており、航空機の運用では避けられないCO2排出への対応を模索している。
久保田氏は「日本国内でもEVの導入を検討中であり、数台を購入して試している段階。グローバルの取り組みと連動して導入を広げていくことになるだろう。単にEVを導入するだけでなく、効率の良い移動を可能にするエコドライブのソリューションも積極的に取り入れたい」と述べている。
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