急拡大するにEコマース市場や製造業が対応を求められているマスカスタマイゼーションに加え、コロナ禍などもあって物流業界は大きな変革を求められている。貨物航空大手のフェデックスで日本のマネージングディレクターを務める久保田圭氏に、足元の市場環境やフェデックスグループのデジタル化などに向けた取り組みなどについて聞いた。
航空便を用いて国際貨物の配送を行う貨物航空の大手企業として知られているのが、米国の物流総合企業フェデックス(FedEx)の傘下にあるフェデックス エクスプレス(FedEx Express)だ。
急激に進んできたEC(Eコマース)市場の拡大で物流に対するニーズは高まっており、製造業が対応を求められているマスカスタマイゼーションを実現していく上でも物流の大きな貢献が求められている。そのような状況下で起こったコロナ禍に加え、ウクライナ情勢をはじめとする地政学的な影響も大きくなりつつあり、物流業界は大きな変革を求められている。
そこで、フェデックス エクスプレス グラウンドオペレーション部門を担当するマネージングディレクターの久保田圭氏に、足元の市場環境、フェデックスグループのデジタル化などに向けた取り組みなどについて聞いた。
フェデックスはさまざまな事業部門から構成されているが、米国内を中心に地上配送を担うフェデックス・グラウンド(FedEx Ground)を並んで最大規模となっているのがフェデックス エクスプレスだ。220以上の国と地域をカバーしており、自社で保有する約680機の航空機と各国拠点のネットワークを活用して貨物航空の配送業務を行っている。
久保田氏は2018年にプランニング&エンジニアリング部のマネジャーとしてフェデックス エクスプレスに入社。2021年10月に、日本国内の24拠点で展開する貨物のピッキングとデリバリーを担当するグラウンドオペレーション部門のトップに就任した。同月に、成田国際空港と関西国際空港における貨物の入荷や出荷を担当するゲートウェイオペレーション部門のマネージングディレクターに就任した区国華(オウ・コウワ)氏ととともに、フェデックスの日本代表者も務めている。久保田氏は「フェデックス エクスプレスの入社以前は、製造業、エネルギー産業、航空業界などでエンジニアを務めていた。個人的な思いとして、日本が有力なロボティクスなどの新技術に強い興味があり、ぜひ取り入れていきたいと考えている」と語る。
フェデックス エクスプレスの強みは、空と陸のグローバルネットワークの活用により、通常で1〜2営業日以内で“時間厳守(Time Definite)”で貨物の配送を実現するサービスにあり、「イノベーティブでスピーディーな業務に向けたチャレンジを続けてきた」(久保田氏)という。例えば、国内から海外に商品を販売する“越境EC事業者”を意識して開発した「FICP(FedEx International Connect Plus)」は、10kg未満という比較的小型の商品の出荷に最適化しており好評を得ている。
フェデックスグループ内の連携により、顧客の利便性を高めるための取り組みも加速させている。米国では、フェデックス エクスプレスとフェデックス・グラウンドの連携により、フェデックス エクスプレス単独では実現できていなかった週末配送を実現した。また、製造業向けでは、フェデックス・ロジスティクスとの連携によって、海上輸送を含めたトータルソリューションを提供するチームも組織している。
足元の環境では、コロナ禍で起こった世界的なサプライチェーンの混乱に対して、フェデックス エクスプレスが自社で保有する航空機約680機を駆使して、キャパシティーが厳しい状況にある国際輸送の中で存在感を発揮している。2022年に入ってから起きたウクライナ情勢の急変や中国・上海のロックダウンなどにも、グローバルのネットワークを柔軟に変更することで対応している。久保田氏は「需要に対応して動的にフライトの数を変更しており、例えば、2021年10月にはフランスと関西国際空港を週4日に増便する対応などをおこなっている」と述べる。
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