アンコンシャスバイアス研究所が「がんと仕事に関する意識調査」の結果を発表した。がん経験者の57.0%が「これまで通り働く」ことを希望した。仕事と治療の両立については、がん経験者の意向と経験者以外の考えに大きな乖離があった。
アンコンシャスバイアス研究所は2022年8月4日、「がんと仕事に関する意識調査」の結果を発表した。同調査は、法政大学キャリアデザイン学部教授の松浦民恵氏との共同研究として実施したものだ。がん経験者(2020年以前にがんと診断され、診断時に働いていた人)1055人、がん経験者以外2111人の合計3166人から有効回答が寄せられた。
まず、がん経験者に「初めてがんと診断された後、仕事はどうなりましたか」と尋ねたところ、「検討した上で希望した働き方」として最も多かったのは「これまで通り働く」(57.0%)だった。「結果として実現した働き方」も「これまで通り働く」(57.1%)が最も多かった。
「結果として実現した働き方」については、転職や退職以外で働き方を変更した人が3割近くを占めた。内訳は「仕事上の役割や責任はこれまで通りだが、勤務の時間や場所が変わる」が12.3%、「仕事上の役割や責任は変わるが、勤務の時間や場所はこれまで通り」が6.3%、「仕事上の役割や責任も、勤務の時間や場所も変わる」が8.3%となっている。
次に「初めてがんと診断されたとき、不安に思ったことはありましたか。また、そのうち時間とともに軽減された不安はありましたか」と尋ねた。その結果、初めてがんと診断されたときに不安に思ったと59.2%が回答した「罹患(りかん)前のように働けなくなるかもしれない」は、時間経過とともに減少し、20%になった。
続いて、がん経験者以外の人で、勤務先の部下ががん経験者だったという人に限定して質問した。身近にがん経験者がいたことで、がんの治療と仕事の両立に対するイメージがどのように変わったかを尋ねたところ、「ポジティブに変化」が17.5%、「どちらかというとポジティブに変化」が45.6%となり、合わせて約63%が「ポジティブに変化」したと感じていた。
今度は、がん経験者以外で、身近ながん経験者から報告や相談を受けた人に質問した。がんと診断されたと報告や相談を受けたときに、その人の仕事に対して最初に思ったことを尋ねたところ、「できる限り、仕事はこれまで通り続けたほうがいい」は30.7%だった。これに対し、がん経験者本人の「できる限り、仕事はこれまで通り続けたい」は53.6%で、周囲とがん経験者本人の考えには大きな乖離(かいり)があることが分かった。
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