インタビュー
» 2022年08月24日 07時00分 公開

クルマの中でQNXとAndroidは競合から協調へ、2025年はさらなる進化の分岐点に車載ソフトウェア(1/2 ページ)

カナダのBlackBerryが、CASE時代を迎えて複雑化する車載ソフトウェアの開発で存在感を増している。車載情報機器とデジタルメーターなどが一体化した統合コックピットの量産導入に向けて、これまで競合関係にあったAndroidとも協調路線を取るなど事業戦略を柔軟に広げているのだ。

[朴尚洙MONOist]
BlackBerry Japanの松岡秀樹氏 BlackBerry Japanの松岡秀樹氏 出所:BlackBerry

 カナダのBlackBerry(ブラックベリー)が、CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)時代を迎えて複雑化する車載ソフトウェアの開発で存在感を増している。これまでは、カーナビゲーションシステムやテレマティクス機器などの車載情報機器(IVI:In-Vehicle Infotainment)において組み込みOS「QNX」を中核とするソフトウェアスイートが採用されてきたが、車載情報機器とデジタルメーターなどが一体化した統合コックピットの量産導入に向けて、車載情報機器で競合していたAndroidとも協調路線を取るなど事業戦略を柔軟に広げている。

 BlackBerryは先進技術部門に当たるBlackBerry Technology Solutionsは、産業機器や医療機器、ロボットなどのミッションクリティカル分野で事業を展開しているが、最も大きな割合を占めるのが自動車だ。2022年6月時点で、QNXを中核とする車載ソフトウェアソリューションの採用実績は、累計の搭載車両数で2億1500万台以上、自動車メーカーで45社以上、車両モデル数で270以上となっている。BlackBerry JapanでQNXカントリーセールスマネージャーを務める松岡秀樹氏は「世界のトップ自動車メーカー10社、トップティア1サプライヤー7社、全てでQNXは採用されている。また、開発から量産に移行する際の遅れが一切起きていないという実績も強調しておきたい。近年は、商用車や新規参入のEV(電気自動車)メーカーなどへの採用も広がっている」と語る。

QNXを採用する自動車業界の顧客 QNXを採用する自動車業界の顧客[クリックで拡大] 出所:BlackBerry

 松岡氏の言う、トップ自動車メーカー10社、トップティア1サプライヤー7社への採用は、トヨタ自動車やデンソーをはじめとする国内メーカー向けの提案活動が結実した成果ともいえる。そして、採用実績を積み上げる中で、車載情報機器に用いられる半導体や関連ソフトウェアのベンダーとのエコシステムも拡充させている。このエコシステムで興味深いのが、車載情報機器関連で一時期競合関係にもあったAndroidの開発元であるGoogleや、「CarPlay」などで車載分野への展開を図っていたAppleも加わっていることだ。「かつてはGoogleやAppleとの関わりはなかったが、コネクテッドという観点でクルマがつながることが当たり前になり、現在では協業関係にある。このエコシステムの存在により、QNXからワンストップで車載プラットフォームの展開も可能になっている」(松岡氏)という。

QNXのエコシステム QNXのエコシステム。赤丸で示した箇所にGoogleの社名とAppleの企業ロゴがある[クリックで拡大] 出所:BlackBerry

ハイパーバイザーによって役割分担が明確に

 実際のところBlackBerryは、Androidや車載Linuxとして知られるAutomotive Grade Linux(AGL)とは一時期競合関係にあった。2017年11月に行った会見では、「AndroidやLinuxは脆弱性だらけ」という指摘を行ったこともあった。

 このような競合の状態から協業へと移行した背景には、BlackBerryが2019年から車載分野での本格的な展開を開始したハイパーバイザー「QNX Hypervisor」の存在がある。同年9月に発表したデンソーと共同開発した複数のHMI(Human Machine Interface)を連携させる統合コックピットシステム「Harmony Core」では、QNX Hypervisorを世界で初めて車載し、メーター、車載マルチメディア、HUD(ヘッドアップディスプレイ)の基本OSを1つのプロセッサ上で動作させている。

 この統合コックピットの開発で課題になるのが、自動車向け機能安全規格であるISO 26262への準拠である。松岡氏は「車載マルチメディア側で何らかの不具合が起きたとしても、ハイパーバイザーで分離しておくことによってメーターやHUDなど運転操作に関わる機器に影響を与えることはない」と説明する。メーターはQNX、車載マルチメディアはAndroidやLinux、ハイパーバイザーによる機能安全はQNXという形で役割分担が明確化することにより、CASE時代を迎えてさらに拡大を続ける車載ソフトウェア市場において、一緒に成長できる協業の関係性に変わったというわけだ。実際に、クルマが進化する中でQNXのフットプリントが増えてきているのは先ほどの採用事例から見ても明らかだ。

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