ダッソー・システムズは年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催(会期:2022年7月6〜26日)。本稿では、基調講演の中から同社 技術部 ディレクターのセバスチャン・カーデット氏の講演「バーチャルツインが加速する持続可能な世界」の内容をお届けする。
ダッソー・システムズは2022年7月6〜26日までの期間、年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2022」をオンラインで開催。“SDGs時代のものづくり 〜バーチャルツインでつながる、持続可能なイノベーション”をテーマに、基調講演の他、ドメイン別/インダストリアル別の約60ものセッションを展開し、同社の取り組みや戦略に加え、ユーザー事例講演など多数の情報発信が行われた。
本稿では、基調講演の中から同社 技術部 ディレクターのセバスチャン・カーデット氏の講演「バーチャルツインが加速する持続可能な世界」の内容をお届けする。
製品やプロセスをバーチャル環境にモデルとして再現し、製品性能の視覚化や予測、フィードバックなどを可能にするバーチャルツインが、サステナビリティの促進にどのような価値をもたらすのか。講演の冒頭、カーデット氏は次に挙げる3つの価値を紹介した。
まず、バーチャルツインが環境型経済(サーキュラーエコノミー)への移行を促進するのに非常に優れたツールである点を挙げる。「バーチャル環境に再現したモデルを簡単に再利用、転用することが可能で、製品ライフサイクルから無駄を排除した形で製品開発を進められるため、循環型経済の実現につなげられる」(カーデット氏)とする。
次に、バーチャルツインは製品ライフサイクルを短縮し、資源の採取から流通、生産終了に至るまで、製品ライフサイクル全体での効率的な資源の利用と回収を促進できる点を挙げる。
そして、最後にバーチャルツインが複雑なプロジェクトのリスクを軽減できる点を挙げ、カーデット氏は「バーチャルツインは電気自動車(EV)開発の85%以上、風力発電分野でも75%以上の新技術開発で広く活用されている」と述べる。
このバーチャルツインの基盤となるのが、プロセスにおけるネットワークであり、製品ライフサイクル全体で製品情報を互いに関連付ける役割も担うデジタルスレッドだ。このデジタルスレッドによって、「製品ライフサイクル全体で仮想モデルを継続的にアップデートし続けることができる」(カーデット氏)という。
バーチャルツインの構築に関しては、その第一歩として、ダッソー・システムズが提供するアプリケーションやロール(役割や機能に応じた複数のアプリケーションの集合)の活用がある。「『CATIA』『ENOVIA』『DELMIA』『SIMULIA』など既存製品からバーチャルツインの構築を始めていくことで、次のステップである『インダストリー・プロセス・エクスペリエンス(IPE)』へとバーチャルツインの活用を拡張できる」(カーデット氏)。
インダストリー・プロセス・エクスペリエンスとは、特定の業務プロセスを支援するためのアプリケーションやロールのセットだという。カーデット氏は「一度、特定のプロセスでバーチャルツインを構築すれば、エンジニアチームに多くのメリットと価値を提供できるようになり、精度の高いシミュレーションが行えるようになる」と説明する。
そして、その先のステップには、異なる業務プロセスを統合し、完全なバーチャルツインを実現する「インダストリー・ソリューション・エクスペリエンス(ISE)」がある。「これは、企業固有のニーズや課題に対するインダストリー・プロセス・エクスペリエンスのセットだといえる。バーチャルツインが完全になればなるほど、より多くのメリットがもたらされるようになり、製品開発期間をさらに短縮できる」(カーデット氏)という。
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