産業界の脱炭素を加速するシーメンス、CO2排出量管理の協会も設立ハノーバーメッセ2022(1/2 ページ)

「11年前に提唱したインダストリー4.0が、今まさに実現している」――。シーメンスは、世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」(2022年5月30日〜6月2日)において、脱炭素化、持続可能な社会実現を加速するデジタル化技術を紹介した。また、会場では記者会見も実施し、CO▽▽2▽▽排出量に関する情報の管理などを目的とする非営利団体「Estainium協会」を14の企業/団体と共に設立したとも発表した。

» 2022年06月14日 11時30分 公開
[永山準MONOist]

 「11年前に提唱したインダストリー4.0が、今まさに実現している」――。シーメンスは、世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」(2022年5月30日〜6月2日)において、脱炭素化など、持続可能な社会実現を加速するデジタル化技術を紹介した。また、会場では記者会見も実施し、CO2排出量に関する情報の管理などを目的とする非営利団体「Estainium協会」を14の企業/団体と共に設立したとも発表した。

2022年、急速に加速したインダストリー4.0

 2011年のハノーバーメッセにおいて初めて提唱されたインダストリー4.0。シーメンスも中心企業として実現に向けたさまざまな活動を行ってきたが、同社取締役兼シーメンスデジタルインダストリーズCEO(最高経営責任者)のCedrik Neike(セドリック・ナイケ)氏によれば、その展開はこれまで十分ではなかったという。しかし、2022年に入り、「まるでケチャップの瓶の底をたたいて、急に中身が全て出てくるように」(同氏)、急速にそのコンセプトが現実のものとなってきたと訴える。

シーメンス取締役兼シーメンスデジタルインダストリーズCEO(最高経営責任者)のCedrik Neike(セドリック・ナイケ)氏

 このきっかけとなったのは、気候変動、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックなどによって表面化したサプライチェーンリスク、そしてロシアのウクライナ侵攻によって露呈した化石燃料への強い依存という3つの課題だ。同社は、「この3つの課題は、デジタル化された企業だけが乗り越え、成長し、社会に貢献できるという警鐘だ。そしてわれわれは、そのための技術を備えている」と述べている。

 Neike氏は、年間およそ19万件の特許が出願される欧州において、同社が出願数上位5位に入ると述べたうえで、「より多くの技術を発明するだけでは十分ではなく、それを実装し、迅速に拡張する必要があるのだ」と説明。その例として、同社が英国において、スーパーマーケットの冷蔵庫内の冷気を保つためのブレードの技術を開発、低消費電力化によって約30万トンのCO2削減効果を実現したという事例を挙げていた。

 シーメンスは今回のハノーバーメッセで、電気自動車(EV)コンセプトカー「SimRod」に関する展示を、同社のデジタル化技術のハイライトとして紹介していた。展示では、EVの開発/製造における各工程において、同社のアディティブマニュファクチュアリングやデジタルツイン、拡張現実(AR)、無人搬送車(AGV)などといったソリューションがいかに効率や持続可能性を高めることができるかを提示。同社は、「SimRodは、技術を実証するためのプラットフォームとして機能し、あらゆる製品や市場を表現することが可能だ」としている。

左=3Dプリントによって製造されたEVの部品。走行中の性能データを収集/分析したうえで車両のデジタルツインに送り込み、1回の充電での走行距離を伸ばすために最適化できる部品を見つけるまで、あらゆる側面をシミュレートすることが可能で、オリジナルの部品(奥)と比べ30%軽量化しているという/右=無人搬送車(AGV)や移動式ロボットによって「生産はより柔軟になる」(同社)[クリックで拡大]
左=ロボットのデジタルツインをARで可視化。動作のシミュレーションやロボットの状態の色分け表示などが可能となっている/右=SimRod。デジタルツインによって信頼性を損なうことなく走行距離を伸ばせる重量と耐久性のバランスや、振動音響特性のチューニングなどあらゆるシミュレーションを行い、その精度を現実世界で検証。取得したデータをデジタルツインに反映し最適化を加速する。Neike氏は「メタバース内で完全なEVをどのようにシミュレートするかを示すスターターであり、開発時間を大幅に短縮可能だ」としている[クリックで拡大]
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