三菱電機が経営戦略を説明。一連の品質不正問題の原因の一つとして指摘されている組織の縦割り構造を打破するとともに、顧客から得たデータを集めたデジタル空間上に関連する組織が横串を通してつながることで進化し続ける統合ソリューションを提供する「循環型デジタル・エンジニアリング企業」をあるべき姿として打ち出した。
三菱電機は2022年5月30日、オンラインで会見を開き、同社の経営戦略を説明した。2021年6月に発表した2021〜2025年度の中期経営計画の目標は据え置き、2025年度に売上高5兆円、営業利益率10%、ROE(株主資本利益率)10%、5年間累計のキャッシュジェネレーション3.4兆円の達成を目指す。また、一連の品質不正問題の原因の一つとして指摘されている組織の縦割り構造を打破するとともに、顧客から得たデータを集めたデジタル空間上に関連する組織が横串を通してつながることで進化し続ける統合ソリューションを提供する「循環型デジタル・エンジニアリング企業」をあるべき姿として打ち出した。
三菱電機 執行役社長 CEOの漆間啓氏が、会見冒頭で示したのが「サステナビリティ経営」の方針である。2021年6月に前執行役社長の杉山武史氏が中期経営計画を発表した際には、「成長性」「収益性・効率性」「健全性」のバランス経営に加えて、全ての活動を通じたサステナビリティの実現に貢献し、経済的価値と社会的価値を両輪とした企業価値のさらなる向上を目指すとしており、サステナビリティの位置付けはそれほど高くはなかった。
今回の会見では、サステナビリティの実現を経営の根幹に据え、事業を通じた社会課題解決を推進することを言明し、サステナビリティ経営に向けて「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「安心・安全」「インクルージョン」「ウェルビーイング」という注力する5つの課題領域を明確化した。
このサステナビリティ経営に求められる、社会課題解決を実現する企業としての在り方が循環型デジタル・エンジニアリング企業だ。漆間氏は「当社は大変幅広い事業領域でさまざまな顧客とのつながりを持っている。多様な顧客に当社製品を運用してもらうことで生まれるデータをデジタル空間上に集め、関係するさまざまな部門でこのデータを分析し、顧客自身が認識していなかった潜在的な課題やニーズを見いだして新たな価値を創出することで『統合ソリューション』を進化させていきたい」と語る。
このデジタル空間が同社グループ内の部署と部署、人と人のつながりを強め、知恵や知識を集積する場となり、さらなる創造力の発揮を促すことを期待している。そして、データを基に価値を生み出すサイクルを繰り返して、多様な社会課題の解決に貢献することにより循環型のデジタル・エンジニアリングが可能になるという見立てだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.