2021年10月の発表時点におけるArm Total Solutions for IoTのコンセプトは、マイコンを搭載するIoT機器の開発期間の短縮だった。今回のラインアップ拡張では、Cortex-Mファミリーにとどめることなく、スマートフォンなどで広く利用されてきた「Cortex-Aファミリー」も加わることになった。
Cortex-1000は、メインプロセッサとして32ビットのCortex-A32と64ビットのCortex-A53を選べるほか、コンパニオンチップとして「Cortex-M0+」もしくは「Cortex-M3」を追加できる。主に、クラウドとの連携を前提に組み込みLinuxベースで動作するスマートカメラやPOS端末、IoTゲートウェイ、自動販売機など向けでの利用を想定。Cortex-1000を用いるソリューションも「Total Solution for Cloud Native Edge Devices」となっており、MLモデルを継続的に最適化するMLOpsやセキュリティのアップデート、CI/CD(継続的インティグレーション/継続的デリバリー)といった、いわゆるクラウドネイティブな組み込み機器向けとなっている。
AVHについても、これらのクラウドネイティブに対応するトレンドを取り込むとともに、ユーザーから得られた3種類の要望に対応した機能拡張を行った。まず、「既にあるCPUアーキテクチャを使いたい」という要望に対しては、「Cortex-M0」から「Cortex-M33」まで全てのCortex-Mファミリーをサポートすることで対応した。これにより、既にある数十億のIoTデバイスの開発をクラウド上のAVHの仮想環境で行えるようになる。
次に「既に利用されている開発環境を使いたい」という要望については、Armの統合開発環境である「Keil MDK」のクラウド版を提供することで対応する。従来通り、GitHubを通じたサンプルアプリケーションやライブラリ提供も継続する。そして「利用できるデバイスの種類を増やしてほしい」という要望に対しては、半導体メーカーなどが提供する開発ボードのエミュレーションもAVH上で行えるようにしていく。今回の発表では、NXPセミコンダクターズの「i.MX 8m plus」、STマイクロエレクトロニクスの「STM32U5 Discovery Kit」、そしてRaspberry Pi 4が利用できるようになった。中島氏は「無償で利用できるAVHによって、これらのボードのエミュレーションをほぼ100%の互換性で行えるインパクトは大きいのではないか。日本製デバイスの対応も検討していく」と強調する。
Project Centauriでは、オープンソースで公開しているクラウド−デバイス間の標準仕様「Open-CMSIS-Pack」が800種類以上利用可能になっている。今回の発表では、Cortex-Mファミリーのエコシステム向けのCDI(Common Device Interface)を定義した「Open-CMSIS-CDI」や、IoT機器の製品設計の参照コードとなる「Open IoT SDK」が追加された。
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