再学習のプロセスでは、いかにモデルの学習を効率化するかが課題になる。そのため西澤氏は、学習用データの前処理からAIモデルの再学習、検証、テストといった一連の処理を自動的かつ継続的に実行できるよう構築した「MLパイプライン」の構築を推奨する。また前処理の前段階として、データ取得を効率化するための工夫も求められる。例えば外観検査であれば、製造現場で取得した画像を自動保存し、同時に担当者が良品か不良品かを判別するラベル付けを行っておき、再学習時に自動的にMLパイプラインにデータを渡せるような仕組みづくりが考えられる。
デプロイ時には、再学習モデルのリリース基準をあらかじめ明確にしておくことが重要になる。基準を満たせばリリースするが、そうでない場合は、再学習の設定変更を行い、再度モデルを作成する。それでも基準に満たなければ、AIモデルの開発者に報告して対応を依頼する必要がある。
また、西澤氏はMLOpsの実施時に生じがちなトラブルとして、担当者間の連携不足によるものを挙げた。運用担当者がモデルの再学習が必要だと気付いた際に、再学習の履歴を管理していないと、前回の再学習時にどのMLパイプラインを使用していたかが分からなくなる。また、開発者から指定された再学習に必要なパッケージのセットアップに手間取る、といった事態も考えられる。
こうした課題解決の手段としては、AIシステムの運用を定型化、自動化するために、運用に必要なツール、プログラム、モニタリング手法を連携した共通基盤の構築が挙げられる。基盤上ではAIシステム運用環境とモデル開発環境、データ管理環境、モデルデプロイ環境が互いに連携し、各作業の遂行を効率化する。
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