カーボンニュートラルは製造業のOSに、IVIが考える具体的手法と実現のカギIVI公開シンポジウム2022春(1)(2/2 ページ)

» 2022年04月12日 13時45分 公開
[三島一孝MONOist]
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サプライチェーンでの温室効果ガス管理に必要な企業間データ連携

 さらに西岡氏は「これらの複雑なデータを収集し、共有を進めていくのを人手で行うのは不可能だ。必然的にデジタル技術を活用することになる」とし、スコープ3への取り組みを具体的に製造業に落とし込む仕組みの1つとして、IVIが2019年から取り組んできた異種環境間でのデータ連携を実現する企業間オープン連携フレームワーク「コネクテッドインダストリーズオープンフレームワーク(CIOF)」を紹介した。

 CIOFは製造現場内で乱立するさまざまなデータフォーマット間の連携を実現するために、既存のプラットフォーム内のシステムやデータ設定などを大きく改変することなく、容易にデータ連携を実現する汎用的なプラットフォームである。2018年12月に仕様公開され、2019年3月に第1版が正式公開。2022年度からは正式にリリースを開始した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から2019〜2021年度まで3カ年の受託事業として推進しており、IVIが幹事となりDMG森精機、ジェイテクト、三菱電機、安川電機、SCSK、ビジネスエンジニアリング、アプストウェブなどが参画している。

 西岡氏は「IVIのこれまでの活動でもあるように、個々の企業の中で温室効果ガス排出量を算出する仕組みは既にある。ただ、サプライチェーンの関係性の中で企業間で情報共有を進めていくとなると、取引の信頼性が必要になる。破ったもの勝ちにならずにデータの信頼をどう確保するのかが重要だが、その部分でCIOFが役立つ。集めたデータを、信頼性を確保しつつ負担小さく共有するという点でCIOFが貢献する」と考えを述べる。

photo CIOFの特徴[クリックで拡大] 出所:IVI

個社ではなくコミュニティーを発展させる思想

 こうした具体的な仕組みの一方で、西岡氏は製造業がカーボンニュートラル化を推進しリードしていくために重要なポイントとして「思い」の重要性を訴える。「こうした地球環境への企業の取り組みは以前から存在したが持続的な形で続いてこなかった。企業間で温室効果ガス排出量を共有するようなカーボンニュートラル化への取り組みが直接的に利益を生むわけではない。そこをコストと見るか、サプライチェーンを構成する共同体が新たな目的に向かって進むために必要な投資だと見るのかで大きく変わってくる。コストとして見た場合は補助金頼みで長くは続かない。一方で共同体としての進化を考えた場合、新しいビジネスルールとして機能するようになり、定着する」と西岡氏は考えを述べている。

photo カーボンニュートラルを製造業の価値に[クリックで拡大] 出所:IVI

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