クリニックでのクラウド活用が進む中で、内視鏡画像をクラウドで取り扱うという観点だけで見れば、両社が協業する必要はないように感じるかもしれない。ただし、現在の医療現場では、内視鏡をはじめとするさまざまな医用画像データを組み合わせて医師が診断を行えるように、PACSに医用画像の国際規格であるDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)データとして格納するのが一般的だ。Vivoly+単体では、内視鏡画像についてAIサポートを含めた先進的な取り組みが可能ではあるものの、他の医用画像との連携が難しいことが課題になる。
この課題を解決するのが、PACSをはじめ医用画像情報のネットワーク化に長けたコニカミノルタの技術をベースに、オリンパスの求める仕様を反映して開発したBlueGateである。BlueGateは、内視鏡画像をDICOMフォーマットに変換しVivoly+とPACSに自動でアップロードする機能を備えている。これにより、医療現場では内視鏡画像を他のさまざまな医用画像データと同様にシームレスに扱えるようになり、より効率的なデータ管理が可能となる。また、BlueGateそのものがVivoly+の利用端末になることを考えると、Vivoly+の導入を検討しているクリニックにとっては必須の端末になるといえるかもしれない。「BlueGateを通して、画像AI解析による病変の視認性向上や、医療機関同士のデータ共有、外出先の医師とのコミュニケーションなどのクラウドサービスを提供するinfomityも利用可能であり、クリニックのDXに貢献できる」(松尾氏)という。
また、Vivoly+のクラウドを活用した機能が、PACSを中心に行われている現在の医療現場の活動に組み込まれることには大きな意義がある。胃などの上部消化管における内視鏡検査は、体調不良を感じた際に行う保険診療と、自治体による住民健診に代表される対策型検診、人間ドックなどに任意型検診に分けられる。これらのうち対策型検診は、検査の精度を保証するために、検査を担当した医師とは別の医師に検査結果の確認を要請する二次読影という仕組みがあるが、検診を実施するクリニックから二次読影を行う医師へのデータ送付はDVDを郵送するという極めてアナログな手法が用いられている。
クリニック側での検診用レポートを作成し提出画像をDVDにコピーする作業、これらのレポートとDVDを受け取って整理する医師会の作業、二次読影側で改めてレポートを作成し郵送する作業は煩雑だ。これらの作業の効率化で大きな力を発揮するのがクラウドを活用するVivoly+である。クリニック側で検診用レポートと二次読影用の画像をVivoly+にアップロードすれば、医師会による整理の手間が省かれ、二次読影側も場所を選ばずにレポートを作成できる。そして、DVDによる郵送も不要になる。両社で開発したBlueGateを使えば、これまでの医療現場のワークフローを変えることなく、対策型検診の効率化に代表されるVivoly+によるクラウド活用のメリットを享受できるというわけだ。
BlueGateの販売はVivoly+の国内展開を担うオリンパスマーケティングが担当。保守や故障対応などのカスタマーサービスはコニカミノルタジャパンが行うという役割分担だ。梅本氏は「現在はVivoly+とBlueGateの周知を進めている段階だが、評価の申し込みなども入ってきつつある。特に、Vivoly+のAIサポート機能は高い評価が得られている。国内で広く行われている胃がんの対策型検診の効率化を支援すべく両社で協業を進めていきたい」と述べている。
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