東京大学は、体液に接触すると、瞬時に自己固化する合成ハイドロゲルを開発した。抗凝固薬を加えたラットの血液に合成ハイドロゲルを接触させ、血液ごと瞬時に固化することを確認した。
東京大学は2022年3月7日、体液に接触すると、瞬時に自己固化する合成ハイドロゲルを開発したと発表した。大量出血時にも、速やかな止血ができる。
この合成ハイドロゲルは、4分岐型のポリエチレングリコール(PEG)を主成分とした弱酸性の液体で、徐々に反応が進み固体になる。弱酸性では反応が制限されるが、中性では速やかに進むという性質を持つ。
血液は、外から少量の酸や塩基を加えても、緩衝作用によりpHを一定に保つ。そのため、弱酸性の合成ハイドロゲルと血液が接触すると、緩衝作用によって瞬時に中和される。その際、血液を巻き込んだ固化を引き起こすため、止血効果が得られる。
実際に、抗凝固薬を加えたラットの血液に合成ハイドロゲルを接触させると、血液ごと瞬時に固化した。また、ラットの下大静脈大量出血モデルで合成ハイドロゲルの効果を確認したところ、一定のPEG濃度以上で、1分後に安定した止血効果が得られた。止血から1週間後に、適用部位の組織学的評価を実施すると、従来の止血剤よりも炎症反応が軽度だった。
生体が本来有する血液凝固反応とは独立した作用機序で血液を固化させるため、抗凝固薬の投与などで血液が固まりにくい場合にも利用できる可能性がある。さらに、髄液などさまざまな体液漏出防止剤としての利用も期待される。
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