3Dデータを他部門にも共有して全社でうまく活用したい……テルえもんの3Dモノづくり相談所(9)(2/3 ページ)

» 2022年03月02日 10時00分 公開

社内全体で3Dデータ/ビュワーを活用して業務改革を推進

 さらに、3Dデータ上に寸法や注記を付加した3D図面をビュワーで閲覧しながら、指示を追加できるものもあります。寸法があることで形状のサイズ感を把握でき、幾何公差も指示可能なため、後工程に渡す際に2D図面がなくても設計者の意図を伝えられます。また、各部門で確認が必要な箇所があれば、それぞれの部門で距離や角度などを測定することによって、2D図面を作成するという設計者の手間や作業負荷を減らせます。

左:「3DTascalX」で3D図面を確認している例/右:「Lattice3D Reporter」で作成したExcelの帳票例 図3 左:「3DTascalX」で3D図面を確認している例/右:「Lattice3D Reporter」で作成したExcelの帳票例[クリックで拡大]

 ビュワーによっては追加機能として、Microsoftの「Word」や「Excel」などのドキュメント上に3Dデータを張り付けて、グリグリと動かしながら形状を確認できるものもあります。例えば、Excelの部品表と連携させて、部品名のセルをクリックするとその部品を3D表示したり、組み立てや分解の動きと連動して構造を確認できたりといった使い方が可能です。

 最近では、VR(仮想現実)AR(拡張現実)空間上で3Dデータを確認できるビュワーもあります(もうここまでくると「ビュワー」とは呼ばないかもしれませんね)。よりリアルに、1分の1スケールで、自分の視線の高さで、3Dデータ形状をじっくりと確認できるため、普段ディスプレイ上で見ているだけでは気が付かないような不具合の発見にもつながり、設計品質の向上などに役立てられます。

 ビュワーは、個別の部門や業務の中だけでなく、社内全体での3Dデータ活用を手助けしてくれるツールだといえます。全部門に3D CADを導入するには費用がかかりますが、ビュワーであれば無償で利用可能なものもあるため、手軽に全社による3D推進、さらにはデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の実現に向けた社内の業務改革を進めることができます。

 3Dデータを設計部門のみならず、製造/生産技術、サービス、調達、営業、マーケティングといった各部門で有効活用できれば、新たな気付きやより良いアイデアが生まれやすくなり、競争力強化につながる製造効率化や品質/サービス向上なども実現できるでしょう。

ラティス・テクノロジーの超軽量3Dフォーマット「XVL」について 図4 ラティス・テクノロジーの超軽量3Dフォーマット「XVL」について[クリックで拡大] 出所:ラティス・テクノロジー(図版レイアウトは編集部にて変更)

3Dデータ共有からの次のステップ

 形状を閲覧するだけのビュワー以上の機能を搭載した商用ソフトウェアの中には、人体モデルを配置して作業性やメンテナンス性などを確認できたり、組み立て手順書や生産ラインを作成できたりなど、3D CADだけでは実現が難しいことを支援してくれるものもあります。ビュワーというより「DMUデジタルモックアップ)」ツールですね。代表的なものとしては、ラティス・テクノロジーの「XVL Studio」や富士通の「COLMINA デジタル生産準備 VPS(Virtual Product&Process Simulator)」などがあります。

富士通の「COLMINA デジタル生産準備 VPS」の構成と役割 図5 富士通の「COLMINA デジタル生産準備 VPS」の構成と役割[クリックで拡大] 出所:富士通

 設計者が3D CADで作成した3Dデータを活用し、生産技術者が生産性を検討するということも可能になります。実機の代わりに3Dデータを用い、生産準備部門が設計から製造に至るまでの要となり、組み立て業務を主体としたモノづくり検証と伝達を支援し、品質向上と原価低減の検討に役立てます。

 さらに進んだ取り組みとして、メカトロ(メカトロニクス)の検証があります。少し前までは、生産設備におけるPLC制御の検証などは実機を作って確認するしかありませんでした。しかし、現在は実機の完成前に仮想環境上でメカおよびソフトウェアの動作検証が行えます。開発の早い段階からソフトウェアの検証やデバッグに着手できるため、品質向上と開発のリードタイム短縮につなげられます。最近では、3D CADでロボットのティーチングなどが行えるシミュレーターも登場しています。

 他にも、3Dスキャンして得た点群データを読み込めるビュワーもあり、工場内を3Dスキャンした点群の3Dデータと設計した設備の3D CADデータを取り込んで、問題なく設備の配置や搬入/搬出が行えるかをデジタル上で検証することが可能です。これにより、現場で問題が発覚した際の手戻り作業などによる余計なコストや時間を節約し、工場や生産ラインの早期立ち上げにつなげられます。

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