2週間で砂漠を疾走するダカールラリーは、電動化技術を磨く過酷な実験室にモータースポーツ超入門(12)(2/3 ページ)

» 2022年02月18日 06時00分 公開
[福岡雄洋MONOist]

 翌1984年は市販車改造クラスに挑戦。エンジンや駆動系を改良し、サスペンションは1輪当たり2本のショックアブソーバーを装着するなど走行性能を向上させた。初の総合優勝を果たした1985年大会では、ハイスピード化に対応すべくプロトタイプ仕様のパジェロを投入した。ボディーパネルには炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用し200kg以上の軽量化を実現。リアサスペンションはリーフスプリングから3リンク式に変更することで、悪路走破性、路面追従性を高めた。エンジンはターボチャージャーとインタークーラーをサイズアップし、最高出力は225馬力、最大トルクは32kg-mに引き上げている。

 このプロトタイプ仕様はその後も正常進化を続けた。1988年にはルーフのテール部をえぐり丸みをつけた「エッグシェイプボディー」を採用し空力性能を大幅に向上。1991年にはトランスファーにハイ・ロー切り替え機構を持つ6速トランスミッションを採用するなど走行性能に磨きをかけてきた。

 大きな車両変更を受けたのが1997年大会だ。自動車メーカーのワークスチームによるプロトタイプ車での出場や、過給機付きガソリンエンジンが禁止され、三菱自は2代目「パジェロ・ショート」をベースに「パジェロ・T2仕様」を新たに開発。シャシーとフレームを結合するなど高剛性ボディーを実現するともに、フロントにダブルウィッシュボーン、リアに改良型のリジット式サスペンションを採用するなど、プロトタイプで培ってきた技術を生かして高い戦闘力を持つ車両を作り上げた。その結果、史上初となる同一メーカーによる1〜4位独占という快挙を成し遂げている。

 2003年にはコンセプトカーのデザインを融合させた新型マシン「パジェロエボリューション・スーパープロダクション仕様」を開発。2000年から2007年まで続いた総合優勝7連覇に大きく貢献した。最後の参戦となった2009年大会には、パジェロエボリューションの技術を踏襲した「レーシングランサー・スーパープロダクション仕様」を投入。エンジンは排気量3lのV型6気筒ディーゼルターボを採用し、エンジン回転数と負荷状況に応じて大小2つのタービンを協調制御する新システムによって全回転域での高出力化を実現した。

挑戦を続ける日野、2022年は初のレース用HEVで参戦

 ダカールラリーには、日野自動車も挑戦を続けている。初参戦は1991年で、一貫して「日野レンジャー」で戦ってきた。1997年にはトラック部門総合では史上初となる1〜3位を独占。1996〜2002年に創設された「排気量10リットル未満クラス」でも7連覇を果たした。同クラスは2005年大会で再設定され、日野は2007年大会で優勝。2010年以降、クラス連覇を続けている。

 2022年大会では、初のレース用ハイブリッドシステムを搭載した北米専用ボンネットトラック「HINO600シリーズ」で参戦し注目を集めた。エンジンは最高出力800馬力を発揮する排気量8.8lの直列6気筒ディーゼルターボ。これに瞬発的なモーター出力を可能にするキャパシターを組み合わせることで、システム最高出力は1080馬力の高出力を実現している。

レース用ハイブリッドシステムを搭載した日野自動車「HINO600シリーズ」[クリックで拡大] 出所:日野自動車

 トランスミッションはトルクコンバーター付の6速ATを採用。トルクコンバーターによってエンジントルクを増幅させ高い発進性能と最高速度まで素早く到達する特性を実現することで、8.8lという従来よりも小さい排気量を補完する重要な役割を担った。

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