低抵抗で高透過率の透明導電フィルム、パナソニックがロールtoロール新工法で開発組み込み開発ニュース

パナソニック インダストリー社は2022年2月16日、低抵抗値と高い透過率を実現するメタルメッシュ方式の透明導電フィルムを商品化したと発表した。独自のロールtoロールでの両面一括配線工法を開発したことで可能としている。

» 2022年02月17日 12時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック インダストリー社は2022年2月16日、低抵抗値と高い透過率を実現するメタルメッシュ方式の透明導電フィルムを商品化したと発表した。独自のロールtoロールでの両面一括配線工法を開発したことで可能としている。

photo 新工法による透明導電フィルム[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 透明導電フィルムはタッチパネルディスプレイなどで多く使用されている。タッチパネルディスプレイは用途の拡大と共に高度化が進んでおり、大型化や高画質化、狭ベゼル化を含むデザイン性、折り曲げなどのフレキシブル化、高感度化などのニーズが生まれている。高まるこれらのニーズに応えていくためには、既存技術の延長線上では難しい部分があるため、パナソニックでは新たな工法に取り組んだ。

 透明導電フィルムにはITO(酸化インジウムスズ)を活用した方式と、フィルム表面に金属をメッシュ状に張り巡らすメタルメッシュ方式があるが、今回は安価な材料で優れた屈曲性、低い抵抗値という特性を持つメタルメッシュ方式を採用。メタルメッシュ方式が従来持つ配線幅による配線見えや透過率減少などの課題克服を目指した。メタルメッシュ方式はフィルム上に金属配線をメッシュ状に配線するが従来のエッチング工法では、配線の交差部分でメタル残りが生まれこれがフィルムの透過率に影響を与えるケースがあった。また、メタルの厚みと細線化がトレードオフの関係となり、低抵抗で細い線を実現しにくい状況があった。

photo メタルメッシュ方式による従来工法の課題[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 そこで、新たに開発したのが、ロールtoロールで両面一括配線を行う新工法の開発だ。これはフィルム上に両面同時に細かい溝を形成し、この溝にメタルを配線するというものだ。

photo 新工法であるロールtoロールで両面一括配線の仕組み[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 フィルムに刻んだ溝によりメタル残りなどの課題を解決できる。溝の深さの分だけメタル配線部分の表面積を下げることができるため細線化が可能となり、フィルムの透過率を高めることができる。さらに、ロールtoロールでの生産方式を確立しており、生産性も確保できる。

photo パナソニック インダストリー社の吉川祐一氏 出所:パナソニック

 パナソニック インダストリー社 メカトロニクス事業部 タッチソリューションビジネスユニット ビジネスユニット長の吉川祐一氏は「業界のどこもやっていない新たな工法を開発したため苦労も多かった。2014年頃に着想したが設備設計から試行錯誤し、4〜5年かけて原理原則を固めた。その後3年くらいをかけて量産に近いラインで課題出しを行い、ようやく製品化レベルにこぎつけた。もともとのタッチセンサーのノウハウに加え、液晶や半導体、光ディスク、磁気テープなどの技術者を加え、これらのノウハウを組み合わせることで実現できた技術だ。競合他社も簡単にはまねできない」と胸を張る。

photo 高い配線アスペクト比を実現[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 新たな透明導電フィルムの生産は、岡山県津山市の津山工場に量産ラインを持ち、そこで行っているが「今後数が増えてくれば、中国の青島工場でも生産することを検討する」(吉川氏)。新工法による用途拡大により、透明導電フィルムの売り上げは2025年度で約50億円の規模に拡大する計画だ。吉川氏は「従来はタッチパネルディスプレイ用が多かったが、透明アンテナや透明ヒーター、透明ディスプレイ基板、高周波用反射板など新たな用途の開拓にもつなげていきたい」と述べている。

photo 独自工法と従来工法の仕様比較[クリックで拡大] 出所:パナソニック

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