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» 2021年11月29日 11時00分 公開

大企業も注目のプラズマ技術で家庭用美顔器を開発、美容スタートアップの挑戦越智岳人の注目スタートアップ(1)(1/3 ページ)

数多くのハードウェアスタートアップやメイカースペース事業者などを取材してきた越智岳人氏が、今注目のスタートアップを紹介する連載。今回は、小型の家庭用プラズマ美顔器「Un」を開発し、既存の美容機器市場に一石を投じ、価格破壊を起こすDENSHINDO(傳心堂)の開発ストーリーを取り上げる。

[越智岳人,MONOist]
DENSHINDO(傳心堂)が開発した家庭用プラズマ美顔器「Un」 DENSHINDO(傳心堂)が開発した家庭用プラズマ美顔器「Un」[クリックで拡大] 出所:DENSHINDO

 DENSHINDO(傳心堂)は2021年10月に家庭用プラズマ美顔器「Un」を発売したばかりのスタートアップだ。

 エステサロン向けの大型プラズマ照射美顔器は1台当たり数千万円程度かかるのに対し、同社のUnは同等の性能を維持しながら小型化を実現。価格も5万9800円(メーカー小売希望価格・税別)と、価格破壊を起こした。

 創業者の野村京氏は、美容機器大手のヤーマンを退職して2019年に起業。東京工業大学で研究されていたプラズマ技術に着目し、美顔器に応用して製品化にこぎ着けた。同社はいかにして多くのハードルを乗り越え、最初の製品を全国販売することができたのか。開発の経緯について取材した。

作りたいものがあるなら、会社の外で作るしかない

「Un」は直径80mmと女性が片手で持てるサイズ。内部で発生したプラズマを温風でシャワー状に送り出すことで、プラズマが肌に触れたときのピリピリ感を回避できる(撮影:筆者) 「Un」は直径80mmと女性が片手で持てるサイズ。内部で発生したプラズマを温風でシャワー状に送り出すことで、プラズマが肌に触れたときのピリピリ感を回避できる[クリックで拡大] 撮影:筆者

 作りたいものがあっても、今の職場では作れないというジレンマを抱えた経験を持つメーカー社員はどれだけいるだろうか。DENSHINDOを創業した野村氏には、メーカーに勤めながらそういった思いを抱えた時期があった。

 野村氏は中国出身で、留学生として武蔵工業大学に入学。新卒でインクリメントPに入社し、カーナビ機器の生産管理に携わった後、ヤーマンに転職した。就職後、日本人と結婚したのを機に日本に帰化している。ヤーマンでは購買部門に配属されていたが、部品調達や工場選定だけでなく、新製品開発の際には試作開発や機能検証まで携わっていた。野村氏は社員の多様性を重んじるヤーマンの中で、美容機器における量産のイロハを学ぶ機会に恵まれた。

 「ヤーマンは女性社員が多く、開発部門でもバックグラウンドに関係なく、さまざまな社員が活躍していました。私も中国の工場に単身出張することは珍しくありませんでした」(野村氏)

 着実にキャリアを積み、中国市場進出チームのリーダーを任されるようになった野村氏は、よりプロジェクトマネジメント能力を高めたいと考え、グロービズ経営大学院でMBAコースに入学する。その頃、野村氏にはひそかに抱いていた野望があった。

 「もっと女性が進んで使いたくなるようなデザインで、美しい美顔器を作りたいと考えていました」(野村氏)

 野村氏がイメージしていたのは高級化粧品のボトルのような美しいデザインで、今までにない機能が自宅で使える美顔器だった。同時に、大企業の中ではエッジの効いた製品や、革新的な製品は生まれにくいことを痛切に感じていた。

 大企業での製品開発プロセスの経験を積むにつれて、自分が作りたい製品はこのままでは実現しないと判断した野村氏は、2017年にヤーマンを退職。大学院に通いながら起業の準備を進めた。

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