「高速推論」については、FA制御の反応に間に合うような高速応答性を実現するAIアルゴリズムの軽量化や高速化を行った。以前から予測値の推定については、リアルタイムでの推論結果を反映することができていたが、信頼度計算についても軽量化しFA機器の制御中に推論結果を利用したフィードバック制御が行えるようにできたという。
三菱電機内の実証では、ロボットの位置や電流などの動作データから負荷推論AIで、負荷質量や重心位置を推定。これを、信頼度を踏まえた形で推論し、負荷パラメータの修正により加減速度の調整を行い、精度の高い制御を行えるようにできたという。これらの調整により20%の高速化に成功したという。
「環適適応」については、加工状態の変化の要因となる変数をモデルに組み込むことで、変化に対応したパラメータを最適化する機能を実現する。従来は加工状態の変化が考慮できないために、加工状態が途中で変わったとしても、加工初期の評価値を基に探索し、最適でないようなパラメータが選ばれる場合があった。これらの変化を織り込むことで、状況が変わった場合も環境変化に追随した形で最適なパラメータ選択が可能となる。
具体的には、形彫放電加工機での実証を行ったという。形彫放電加工機は、穴が深くなる加工を行うと加工くずの滞留により加工速度が低下する状況が生まれる。これを従来は熟練加工者が見極め、加工と加工くず排出のバランスを見極めて作業してきた。これを自動化するために、環境変化に追随する変数を加えた環境適用AI制御を行い、最適化することで加工時間を23%短縮することに成功したという。
今回は技術発表であり、実用化の正確な予定はまだ決まっていないが「2020年代半ばには製品化したいと考えている。現在は顧客企業に向けて紹介を開始しており、評価を得ることができれば製品化の時期をさらに早める可能性もある」と三菱電機 先端技術総合研究所 駆動制御システム技術部長の高橋宣行氏は語っている。
実用化に向けた課題については「AIはデータに依存した技術であり、今回の基礎技術の開発については、三菱電機内でのデータを活用しある程度の評価はできた。ただ、実用化するためにはもっとさまざまなパターンのデータを活用した検証が必要だ。顧客のデータなども活用し、さらに技術検証を進めていく」と高橋氏は述べている。
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