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» 2021年10月01日 06時00分 公開

ホンダが「空飛ぶクルマ」、ガスタービンのシリーズハイブリッドで航続距離4倍に研究開発の最前線(2/3 ページ)

[齊藤由希,MONOist]

空飛ぶクルマはハイブリッドが向く

 eVTOLは、航空機と自動車の中間の移動距離をカバーする“空飛ぶクルマ”として、複数の企業が開発を進めるなど関心を寄せている。

 自動車関連企業ではトヨタ自動車がeVTOLを開発するJoby Aviation(ジョビーアビエーション)に3.94億ドル(約433億円)を出資。Hyundai Motor(現代自動車、ヒュンダイ)は、自動車の大量生産の実績を生かし、機体の安全面の設計や生産でのUberとの協業を発表した(Uberは空飛ぶクルマの開発部門をジョビーアビエーションに売却した)。SUBARU(スバル)も航空宇宙カンパニーの知見やノウハウを生かす道を模索。この他にも空飛ぶクルマ向けのシートや機体用の材料、緊急パラシュートなど、部品の開発も進められている。

 ジョビーアビエーションをはじめ、eVTOLを手掛ける企業の多くはバッテリーを動力源として開発を進める。ただ、バッテリー駆動では航続距離が100kmほどにとどまるため、都市内の飛行など用途が限られる。ホンダはガスタービンで発電した電力をバッテリーに蓄えるシリーズハイブリッドとすることにより、eVTOLの航続距離を400kmまで伸ばす。これにより、オフィスから離れた街で生活しながら必要な時に日帰りで出勤するなど働き方が可能になり、住む場所の選択肢が広がるという。

eVTOLの航続距離のイメージ[クリックで拡大] 出所:本田技術研究所

 開発に当たっては、「ホンダジェット」でFAA認定を取得した経験、空力や騒音・振動対策、軽量化、製造技術、タービン、ジェットエンジンなどのノウハウに加えて、レース活動で培った超高回転ジェネレーター、自動車の電動化技術やカーボンニュートラル燃料など、ホンダが持つ技術を結集する。電池については、技術進化を受けて優れたバッテリーを取り入れられるようにしていく。

開発中のeVTOL(左)とガスタービンエンジン(右)[クリックで拡大] 出所:本田技術研究所

 現在はスケールモデルを用いながら機体を設計しており、機体に使用する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の検討なども進めている。故障時にも安全に飛行を継続するための機体の制御についても開発中だ。複数のローターを協調制御しながら安定した飛行姿勢を保つのは難易度が高いという。

 機体の開発だけでなく、自動車や交通機関など他の移動手段との連携や管制システム、運航システムなどモビリティエコシステム全体の設計にも取り組む。MBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)も活用しながら、相互関係にある周辺のシステムとの関わりもデザインする。

 eVTOL製品化の近道は「米国にある」(川辺氏)という。米国は規制や基準も含めた空飛ぶクルマの議論が先行しているためだ。「まずは米国で認定を取り、技術をつかみたい。米国が皮切りになるが、米国での商売を重視するのとは違う。滑走路が不要なeVTOLはさまざまなところにマーケットがある。米国でいち早く事業化できれば、日本でも早期に事業を立ち上げることにもつながるだろう」(川辺氏)。

「ASIMOの手」からさらなる飛躍

 自分自身の分身のように遠隔地で活動するアバターロボットの活用についても、すでにさまざまな企業が乗り出している。本田技術研究所では、その場にいなくても自然に作業や体験ができるのがアバターロボットのメリットになると想定し、多指ロボットハンドの高性能化に取り組む。

 まずは小銭などの小さいものを指先でつまむ繊細さと、15kgほどの重いものを持ち続けたり、ペットボトルのふたを開けたりする力強さを両立できるようにする。指先の力としては、10gfから6kgfまで幅広い。缶のプルタブを開けるなど、指の力と爪先を使うような細かい作業にも対応する。さらに、モノを把持するまでの手指の動かし方や、置いてあるスクリュードライバーを手に取ってねじを締めるなど細かな作業での自然な操作性も追求する。将来的には、触覚や力覚のフィードバックにも対応する。

多指ロボットハンドの目指す姿[クリックで拡大] 出所:本田技術研究所
缶のプルタブを開ける様子[クリックで再生] 出所:ホンダ

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