近年、ケイレツは「解消」と「強化」、両方の動きがあります。「解消」として最も象徴的だった事例は、2017年に日産自動車がカルソニックカンセイの株式を売却した件でしょう。
カルソニックカンセイは日産系の中でも中核ともいえるティア1サプライヤーでした。売却される直前の2016年3月期決算では、1兆円もの売上高を達成しています。日産は2017年、株式を米国の投資ファンドへ売却。その後、カルソニックカンセイは当時フィアットクライスラー(FCA)の子会社であったマレリと合併し、外資系企業になりました。
また、2020年1月には日立オートモティブシステムズとホンダ系部品メーカーだったケーヒン、ショーワ、日信工業が合併し、「日立Astemo(アステモ)」が誕生しました。ケイレツの枠を超えた大規模合併は自動車業界の業界再編を象徴する出来事でした。
一方で、トヨタは系列内での関係を強化しています。トヨタ系最大の部品メーカーであるデンソーとトヨタの関係は近年さらに親密で、エレクトロニクス分野での協力が目立ちます。例えば、2018年にトヨタ自動車の広瀬工場の運営を含めた電子部品事業をデンソーが譲り受けました。2020年には次世代半導体の研究と先行開発を行う共同出資会社「MIRISE Technologies(ミライズ・テクノロジーズ)」を立ち上げました。
自動運転や電動化に関しては、トヨタ系サプライヤー同士の協力も活発です。デンソー、アイシン、アドヴィックス、ジェイテクトは自動運転の統合制御ソフトウェアを開発する「J-QuAD DYNAMICS(ジェイクワッド ダイナミクス)」を立上げています。また、デンソーとアイシンは電動駆動モジュールの開発会社「BluE Nexus(ブルーイー ネクサス)」を設立しました。グループ内で再編を進め、「トヨタ系」として欧州のメガサプライヤーに匹敵する総合部品メーカーを構築する動きが見られます。これ以外にも、トヨタグループの各社の間でシステム開発や、プロジェクトベースでの連携が進んでいます。
激変する情勢の中で、自動車部品に新規参入する企業もあり、ケイレツの外から存在感を強めています。代表的なのは日本電産です。モーターに強みのある日本電産は電動パワーステアリング用モーターから車載事業を拡大し、M&Aを繰り返しながら技術を取り込んできました。同社は現在、統合的なシステムサプライヤーになるべく、自動車メーカーに売り込みをかけています。
現在は「EV(電気自動車)の心臓部」である駆動システム「E-Axle」の開発を進め、中国の新興自動車メーカー向けEVで受注実績もあります。ケイレツを重視する日本の自動車メーカーでも、部品の競争力が十分であれば、こうした新規参入企業に転注する可能性もあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.