他方、民間部門では、マルチステークホルダー型コンソーシアムによる医療分野へのブロックチェーン適用に向けた取り組みが進んだ。例えば、2017年12月、ヒューマナ(医療保険者)、マルチプラン(医療支払管理サービス)、オプタム(薬剤給付管理サービス)、クエスト・ダイアグノスティクス(臨床検査機関)、ユナイテッドヘルスケア(医療保険者)は、正確で効率的な医療機関のデータ管理および共有における課題に取り組む際のブロックチェーン技術利用について調査することを目的として、シナプティック・ヘルス・アライアンスを創設した(関連情報、PDF)。
翌2018年4月には、実証試験プロジェクトを開始し、同年12月には、エトナ(医療保険者)とアセンシオン(医療機関)が、アライアンスへの参画を表明している(関連情報)。なお、シナプティック・ヘルス・アライアンスは、ブロックチェーンプラットフォームとして、イーサリアム(Ethereum)プロトコルのエンタープライズ版である「Quorum」を活用している。
また、2018年11月8日、専門職資格情報交換サービスを提供するプロフェッショナル・クレデンシャルズ・エクスチェンジ(ProCredEx)は、ナショナルガバメントサービス(IT/ビジネス・アウトソーシングサービス)、スペクトラムヘルス(医療機関)、ウェルケア・ヘルスプラン(医療保険者)、アクセンチュア(プロフェッショナルサービス)、ハーデンベルクグループ(医療人材支援サービス)と連携して、医療専門職確認業務の非効率性を解決することを目的とした分散台帳プログラムを立ち上げたことを発表した(関連情報)。ProCredExは、ブロックチェーンプラットフォームとして、「r3 Corda」を活用している。
このような取り組みと同時期に、行政機関側でも、本連載第23回や第65回で取り上げたような、IT戦略に基づくDX施策が本格化し、組織課題の解決を実現するツールとして、ブロックチェーン技術への関心が高まっていった。
例えば、2019年6月5日に開催された米国技術協議会・産業諮問協議会(ACT-IAC)のエマージングテクノロジー・フォーラム(関連情報)において、HHSは、ブロックチェーンや機械学習、人工知能を利用して、調達を簡素化する「HHSアクセラレート」プログラムの状況を報告している。同プログラムの中で機械学習アルゴリズムは、ブロックチェーンに供給される前に、データ層からデータをクレンジングする役割を担うとしている。
図1は、HHSアクセラレートにおけるブロックチェーン利用の全体イメージを示している。
各部局の契約書作成システムを、ブロックチェーン技術を利用してデータ層で連携させ、その上で、マイクロサービスにより、人工知能(AI)や機械学習(ML)、ロボットによる業務自動化(RPA)などの機能を駆使しながらコアサービスを提供する流れになっている。このような全体イメージの下で、HHSは、ブロックチェーンや人工知能を活用したPoC(概念実証)を実施してきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック対応下でのトランプ政権からバイデン政権への移行を踏まえて、今後、官民双方の動きがどのように進展するのかが注目される。
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