これらのWGのうちモデル流通WGでは、モデルを利用して会社間でモデルデータ授受する際のルールや課題の抽出を進めた。活動を通して仕様の一部をモデル化することにより、会社間での意思疎通を円滑し、開発期間の短縮実現を目指している。取り扱い対象モデルはSimulinkモデルおよびシステム仕様モデル(SysML、MATLAB/Simulinkのツール「System Composer」)とし、最終目標をMBAC提唱のMBD標準設計プロセスの制定に置いた。その後、要求仕様書を会社間でデータ授受するドキュメントなどのフォーマット作成までにつなげる予定だ。
モデル流通WGでは、モデル活用シーンについて「システム設計」と「シミュレーション検証」に分けて、課題などを抽出するためのプロセス試行を実施した。システム設計に関してはSysMLツールとSystem Composerでの比較を行った。「シミュレーション検証」ではコントローラーモデルおよびプラントモデルを会社間で授受するプロセス試行に取り組んだ。
今後もこれらのプロセス試行を続ける予定で、システム設計では引き続きSysMLツールとSystem Composerの比較・利用検討を行いながらMBSEの標準化を進めていく。シミュレーション検証では試行して分かった課題に対して解決案を検討する。また、MBACとしてMBSEおよびMBDによる標準設計プロセスの定義を実施して、各種フォーマット作成に取り組む。「最終的には2021年度中に成果物としてMBACメンバーに共有すべく鋭意活動を継続する予定だ」(坂井氏)という。
一方、モデル作成規約WGは、統合シミュレーションを活用してシステム開発を行う上で、それぞれの装備品担当会社でモデルを作成することを想定。このとき、各社で自由なフォーマットでモデルを作成すると混乱を招くことになるため、MBACとしてモデル作成規約を整備することにした。
規約の作成では、自動車業界のMBD推進団体であるJMAAB発行の「制御モデリングガイドラインVer.5.1」を参考にし、航空機開発において必要となるルールを定めた。最終的には、モデル作成者とレビュアーなどの関係者で共通の理解が得られるようにするとともに、各社の規約作成時の参考として利用できるものを作成することで各社での時間短縮を図り、各社のMBDに関するレベルを上げて業界の底上げに結び付けることを目標としている。
活動の成果として、今回はJMAABの作成の規約を参考にしたことで、各社の意見集約が早期にまとめることができ、約5カ月間で規約の制定までに至った。ただし、状態遷移設計に用いられる「Stateflow」については、使用実績が乏しかったため規約作成は見送った。このモデル作成規約を初版として発行し、目標を達成することができたことで、WGとしての活動はいったん終了している。今後は、同規約に基に各社のMBDへの経験値を蓄積し、改定、維持していく不定期のWGの活動を再開することを予定している。
今後のMBAC活動としては、2021年度内をめどにモデル流通WGでの標準的なMBDプロセスの制定を進めるとともに、各社で共通する「スキル不足」や「社内普及活動」の課題を解決するためのWG活動などを始める。また、情報共有や活動成果を広く公開することなどを念頭にMBACのWebサイトの作成も検討している。坂井氏は「国内航空機製造業で一体となり、世界で活躍できる技術を早期に獲得すべく、今後もMBACの活動を続けていく」と述べている。
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