インテルは、微細化だけでなく、トランジスタに新たな材料や構造を導入することで半導体の性能向上を実現してきた。土岐氏は「これまでも、90nmでひずみシリコン、45nmでHigh-kメタルゲート、22nmでFinFET、10nmでSuperFinなどを導入してきた」と語る。そして、オングストローム世代に入るIntel 20Aでは、電源供給をウエハー裏面の基板側から行う「PowerVia」と新たなトランジスタ構造である「RibbonFET」を採用することを決めた。
まずPowerViaは、ウエハー上に半導体のトランジスタを作り込む表面と逆側の裏面から電源を供給する技術である。「一般的な半導体は、ウエハー表面にトランジスタを作り込んでから、さらにその上に配線層を重ねていくことになる。微細化が進む中で、半導体回路の設計者の悩みとなっていたのが、信号ラインと電源ラインが混在してしまうことだった。そこで、PowerViaでは、信号ラインは従来と同じくトランジスタの上に積層する配線層で構築し、電源ラインはウエハー裏面から供給することで、微細化する中でも半導体の設計を容易にするとともに、電源ラインからの影響が信号ラインに及ばないことで高いシグナルインテグリティも確保できるようになる」(土岐氏)。なお、PowerViaを用いた半導体の量産は2024年に始まるという。
一方、RibbonFETは、トランジスタのゲート形状が全周ゲート型(GAA:gate all around)と呼ぶ構造になる。土岐氏は「プレーナー型からFinFETに変わるときも、トランジスタの断面形状が台形から尖ったフィン型になったが、今回も大きな変更になる」と述べる。なおRibbonFETは、これまでインテルが学会発表した際には「nanoribbon」と表記しており、他社の同様の技術は「nanosheet」などと呼ばれている。ゲートが丸く一つの塊になっているため、積層できる点で従来のトランジスタ構造と異なる。なお、RibbonFETを用いた半導体量産もPowerViaと同時期の2024年上期に始まる予定だ。つまり、オングストローム世代のIntel 20Aは2024年から量産が始まることになる。
Intel 20Aの次世代となる「Intel 18A」は、2025年に向けて開発が始まったところだ。2世代目のRibbonFETを採用するなどして、Intel 20Aから10~15%以上の性能向上を目指すことになる。
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