エアロシールドの紫外線照射装置が採用する室上部水平照射式は、COVID-19の感染対策でも大きな効果を発揮する。COVID-19の感染経路としては、接触感染や飛沫感染が広く知られており、接触感染への対策として手指の消毒などが、飛沫感染への対策としてサージカルマスクの装着や密を避けるソーシャルディスタンスなどが行われている。しかし、3つ目の感染経路として「エアロゾル感染」への注目が集まっている。
エアロゾルは飛沫がより細かくなったものであり、粒が大きくてすぐに落下する飛沫とは異なり、水蒸気などに付着しばらく漂い、飛沫より長く遠くへ届く。スーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーションでも、エアロゾルが空中にしばらく漂うという結果が示されている。
ただし現状ではエアロゾル感染には明確な定義がなく、米国のCDC(疾病予防管理センター)はエアロゾル感染による実質的な「空気感染」が感染経路になっているという見解を出すなどしている。
木原氏は「空気感染か飛沫感染かどうかという定義の問題よりも、COVID-19は空中伝播によって拡大し得るという事実が重要だ。この空中伝播への対策としては、陰圧室隔離やN95マスクなどがあるが、一般的な人がいる空間への適用は難しい。そこで有効なのが室上部水平照射式による紫外線照射装置だ」と説明する。実際に、CDCや臨床雑誌のJAMA(Journal of American Medical Association)などでも、COVID-19への対策として室上部水平照射式の紫外線照射装置の利用を推奨しているという。
なお、細菌やウイルスの空中伝播への対策として室内換気が挙げられることも多い。ただし、自然換気は部屋全体で空気を通すことが難しい。また、CDCが感染症患者を隔離する医療施設の機械換気の基準として、新規の建物で毎時12回以上、既存の建物で毎時6回以上といった基準を示しているが、冷暖房との兼ね合いも考えるとこれだけ頻繁な換気は容易ではない。先述のJAMAの論文によれば、室上部水平照射式の紫外線照射装置の使用は毎時24回の換気に相当するという論文を掲載している。この他、医療施設では検査室などのように窓のない部屋もあり、そういった場所での感染症対策としても有効になり得る。
これらCDCなどの推奨もあって、グローバルで見ても数社しか展開していなかった室上部水平照射式の紫外線照射装置の開発に向けた活動が活発になりつつある。木原氏は「当社には、これまで1000施設に8000台以上を納入してきたフィールドでの実績と、それらの実績から得た多種多様な対策ノウハウやデータがある。このことを強みに、富士通ゼネラルの助けも得て事業を着実に展開していきたい」と述べている。
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