DX建設支援ソリューションをサーバレス化、コマツがAWSを採用した理由製造IT導入事例

AWSジャパンは2021年6月25日、小松製作所が建設現場向けのデジタルソリューション「デジタルトランスフォーメーション・スマートコンストラクション」においてAWSのサービスを採用したと発表した。建設支援ソリューションをサーバレス環境下で、迅速にグローバル展開できるようになるという。

» 2021年06月30日 14時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 AWSジャパンは2021年6月25日、小松製作所(コマツ)が建設現場向けのデジタルソリューション「デジタルトランスフォーメーション・スマートコンストラクション(DXコンストラクション)」においてAWSのサービスを採用したと発表した。建設支援ソリューションをサーバレス環境下で、迅速にグローバル展開できるようになるという。

建設生産プロセスを“個別”ではなく横断的に支援

 国内建設業界では、高度経済成長期に整備した社会インフラの維持や更新、災害への対応や復旧などのニーズに支えられる形で、建設需要は現在の水準をしばらく維持することが見込まれている。一方で高齢化の影響によって建設現場では若年労働者が減少傾向にあり、2026年までに約128万人の労働力不足が見込まれるとコマツは指摘する。

コマツの四家氏※出典:コマツ[クリックして拡大]

 こうした課題解決に取り組みべく、コマツは同社製品だけでなく他社製品などを組み合わせて建設現場の生産性向上を目指す建設ソリューション「スマートコンストラクション」を2015年から展開している。同ソリューションを展開したきっかけについて、コマツ 執行役員 スマートコンストラクション推進本部長の四家千佳史氏は「当時、当社は顧客のオペレーション全体の効率化を目指していたが、当社製品は盛り土や法面の施工などオペレーションの一部に適用されるのみで、建設生産プロセス全体の最適化に貢献できる、といった状況にはなかった。顧客のオペレーションを俯瞰的にみると、たったこれだけにしか当社製品が使われていないのかと感じた」と振り返る。

 このような経緯で開始したスマートコンストラクションではあるが、実際には顧客の現状の建設生産プロセスをデジタル化して置き換えているだけではないかと四家氏は疑問視したという。「調査測量、施工計画立案、施工管理、検査など各建設生産プロセスの一部を個別にデジタル化した、部分最適化の取り組みでしかない。施工のプロセス全体をデジタル化してつなげる、DXの取り組みによって、建設現場の生産性、安全性の飛躍的向上が見込める」(四家氏)。

 そこで四家氏が構想したのが、施工プロセス全体を最適化することでスマートコンストラクションをさらに一歩進められるDXスマートコンストラクションであり、そのIT基盤としてAWSのサービスを導入した。トラックや建設機械から取得したデータをAWSのサービスを活用してリアルタイム処理することで、データドリブンな施工計画の立案や判断支援を実現する。例えば、DXスマートコンストラクションのソリューションの1つである「SMART CONSTRUCTION Dashboard」では、ドローンで測量した地表面の3D地形データに、建設機械などから取得した施工進捗データを連携させることで、建設現場の3Dデジタルツインを構築する。

 コマツが採用したAWSサービスのうち、主要なものとしては、仮想サーバ構築サービス「Amazon EC2」、コンテナを実行するためのサーバレス化技術サービス「AWS Fargate」、サーバレスコンピューティングサービス「AWS Lambda」の3つなどがある。これらのサービスを組み合わせることで、スマートコンストラクションにおける新規ソリューション開発をサーバレス化できる。サーバレス化はサーバ管理を不要化するとともに、柔軟なスケーリングや高可用性を実現する。これによってITインフラ管理に必要な工数を削減することで、コマツがアプリケーションの開発作業に専念し、早期の市場投入が可能になるという。

コマツが採用した3つのAWSサービス※出典:コマツ[クリックして拡大]

 これらに加えて、AWS ジャパン 技術統括本部長執行役員の岡嵜禎氏は「AWSの各種サービスは高可用性と耐障害性を持つため、建設生産プロセスの安定運用が可能だ。拡張性も高く、顧客ニーズに合わせたアプリケーションの新規開発を行いやすい。建設現場のIoT(モノのインターネット)化によって、現場データを取得して施工作業を見える化することも可能だ」と説明する。

サーバレス環境下でのアプリケーション開発を可能にする※出典:コマツ[クリックして拡大]

 また、四家氏はAWSを採用した理由について「グローバル展開しているAWSを使えば、世界中どこでも高品質なスマートコンストラクションサービスを提供できる。またAWSは技術/人的リソースが充実しており、サポートが豊富だ。当社の国内外の技術パートナーがAWSを基盤に開発を推進していたというのも要因としてある。これらに加えて、頻繁なアップデートを重ねて顧客の期待に応えようとするAWSの姿勢に、当社として共感できるものがあった」と語った。

DXスマートコンストラクションの内部アプリケーション例※出典:コマツ[クリックして拡大]

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